袈裟


2004/05/12

お葬式で姿を現すお坊さん。神社でお経を読むお坊さん。
このお坊さんが、俺は大嫌いなのである。

大嫌いというより、苦手。いやむしろ、怖いのである。あの剃り上がったツルピカの頭に袈裟。このニュアンスがかもし出すオーラが嫌で嫌でたまらない。あの独特の香り、これも鳥肌が立つほどに嫌なのだ。

こんなこと言ったら全国の坊主が怒り出すかもしれないのだが、俺は断言できる。たとえ全国の坊主を敵に回しても、俺は坊主が嫌いだ。一休さんが・嫌・い・だ!仏なんていう訳のわからない物質も、いなければいいと思う。

まぁハナから坊主を否定している私ヒロでございますが、理由も無く坊主を毛嫌いしているのではありません。一応理由あって坊主を毛嫌いしているのです。善人の塊のようなあの表情の裏には、間違いなく悪魔が潜んでいるのだとそう思って止まないといった次第なのです。

―――そう、あれは暑い暑い夏だっただろうか


空調の効いた部屋。その部屋で俺は、料理を出す仕事に興じてたんです。お客さんは20人ほど。しかも全員坊主です。料理はそこそこ値を張った物で、「坊主丸儲け」って正にこの事なんだなぁ、なんて思いながらおいしそうな料理を配ってました。

えびす顔なお坊さん。仏の顔のようなお坊さん。色々なお坊さんがいるのですが、みんな懐が広くやさしい感じがにじみ出てます。さすが仏の下に使える者だなぁと深く感心してたのですわ。さすが坊主だ。

坊主って本当にカッコいいと思う。あんなに長いお経だって読めるし、貫禄があるし、独特のスタイルだし、リッチだし。スゲーと思う。いい男だと思う。

だから俺も心して料理を運ぼうと思ったのです。一人一人に最高の心遣いってのを行っていったのです。

酒を飲み、若干テンションの上がってきた坊主。みんな訳のわからない話で盛り上がってました。俺には理解不能な話、俺とは全く無縁の世界、そんな世界の話が理解できるはずがありません。

いつになっても食が進まない坊さん。どんどん料理が冷める。けどもまぁそこはさすが坊さん。何も文句を言わず、食べて終わった食器もさり気なく左においてくれるなどという粋な心遣いができております。流石坊主だと思った。

その坊主もまさに食べて終わったかのように左に料理をよせてたんです。それがまたお吸い物だから蓋がついてると中身が見えない。食べて終わったのかな?いやでも蓋が閉じてるしなぁ。けど左に移動させたってことは。。食べて終わったのかな?下げていいのかな?いやでも食べてなかったらまずいしなぁ。。。けどせっかく左に寄せてるのに、下げないのは失礼だなぁ・・・・

もし料理が入ってたら危険だ。そう思い、蓋を開けてから下げることにしました。


――料理、入ってるよ(汗)


やってしまった。どうやら邪魔という理由だけで左に寄せてたらしく、お吸い物は新品の状態で中に入ってたんです。これはまずいことをしてしまった。

このときは、コレが重大な事件に発展するとは思いもしなかった。


酒がどんどん入りテンションが増して行ったとき、ふとその坊主がいきなり大声で言った。

「みんな聞いていただけないか?」

会場はふと暗黙につつまれた。

「私はそろそろ帰ろうと思う。この会場の係員は、私に早く帰れと言っている。そんな会場にずっと要る必要などない。

さっき私が食べようとしていたお吸い物の蓋を、勝手に開ける係員がいた。これは早く食って早く帰れという意味なのだろう。そうに違いない。そんな係員がいるような宴会場には、もういたくない。」

会場にいる人間全てが、その坊主の話を聞いている。そう、係員も責任者も、幹事も、全ての人間がその人の話を黙って聞いている。

全然歓迎されてないな。(俺の方向を見ながら)」

その時見た坊主の目つきは怖かった。綺麗にそられた頭。その下に、人間の悪魔と化した目つき。ダークネスな人間の本性。奴隷を見下すようなそんな目つき。怖くて怖くて、俺は恐怖に震えた。

「私は帰る。」

会場のみんなは一瞬俺のことを睨む。確かに俺は悪い。料理を下げようとした事実はたしかにある。だから、言い訳なんかしない。けど、こんなのあんまりだと思った。あんなに優しそうな坊主は、実は善人の皮をかぶっただけの悪魔そのものじゃねぇーか。そこらの金持ち野郎と大して変わらねぇじゃねーかと。

全員の目がこっちに向く。はげ頭。その下にダークネスな目。そしていつしか係員全ても、俺のことを睨むのだった。俺はその場にいるのが嫌になってきた。人生辞めたくもなった。

その後責任者に直接責めたらしく、俺にそのまま怒りの矛先が流れてきたのは言うまでも無い。一日中さんざん怒られた。たしかに俺が悪い。確かに俺が悪いのだが、あの時見た坊主の怒り狂った顔、あれを決して忘れることは無い。人を見下すようなあの目つき、あれが坊主の本性だと思うと、自分が仏教であることが嫌になってくる。人の弱い部分をついて傷を広げて弄ぶ、そんな大人は大嫌いだ。


そういう訳なので、俺は坊主が大嫌いです。たしかにこの事件で悪いのは誰かと言うと、間違いなく俺なのですが、個人的に坊主という存在が嫌になるのは間違いない。全国の坊主があんな人ばかりではないと思うけど、少なからずや俺はお坊さんという存在が怖い、苦手、そして大嫌いなのです。

しかし私ヒロは、一応ジャパニーズなのです。イエローモンキーなのです。だから、仏教式の葬式だって開きますし、自分が死んだ時も多分お坊さんに仏教式のお経なんてものを読んでもらえるでしょう。

もちろん俺だってそれは全然嫌ではない。周りがやっていることと同じことをやって不安になるはずが無い!!何が嫌か?坊主だ。仏教は別にどうでもいいが、坊主は嫌い。無理。臭い!たとえ仏の怒りに触れたとしても、俺は坊主が嫌いと突き通せるね。


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