長嶋イズム


2004/05/05

ミスター長嶋は名前を覚えるのが苦手だと聞くが、
俺も人のことを言える義理でもなく名前覚えが下手なのである。

しかも俺の場合はもっと酷い。名前を覚えるのはおろか、人のことを第一印象で勝手に呼んでしまうという酷い癖がある。「あ、コイツ田中っぽいな」っと思えば、大林という立派な名前がついているにもかかわらず勝手に田中田中と呼び狂うまさに長嶋イズムなのである。

山田という名前にはかなり背が高くてかなり痩せまくってる人というイメージが出てくる。したがって、背が高く骨と皮で形成された体格の人間を見ると、無意識のうちにそいつを山田と呼んでたりする。大原という名前には、気高い女のイメージが見え隠れし、かかとのとがったヒールで踏みつけられそうなそんな女を見ると次の瞬間大原と呼んでたりする。自分勝手だが、自己妄想の高い俺にまでなると、ここまで勝手に長嶋イズムが進行するのである。


そして森田っという名前を聞くと、おれの場合非常にロリータなイメージが発生する。

森田という響きを聞いた瞬間、全身の毛穴が広がり、手は物凄い速度で湿り、心臓の鼓動は高まり、息は過呼吸と化し、目はバッチリと見開き、全身全霊かなりの興奮状態となる。森田っという響きを何度も連呼されると、俺は物凄い勢いで激しくオナニーをおっぱじめてもおかしくないといった次第である。

そう、おれの人生で出会った全ての森田さんは、それはもうかなりの組折揃いで、何を隠そう初恋のあの人も森田さんだったのである。中学時代かなりのロリータフェイスで胸ときめかしたのも森田さんだったし、バイトやってて初めてやってきた可愛い後輩もやはり森田さんだった。そう、いつも森田は俺に癒しを供給し、森田という響きが俺を元気付けてくれた。

ここまで森田狂いが始まると、いささか禁断症状も出てくる。

男の癖して森田なんていう名前の奴が出てきたりもするのだが、森田という名前で興奮してしまう体のつくりを持っている俺にもなると、男相手にも息を切らせてハァハァいってしまったりだとかするのである。しかもあまり可愛くない女子にも森田という名前がつくとですね、頭の中で物凄い処理が行われて徐々に可愛くない森田が今までに見たことも無いような可愛い女へ化け、可愛くない森田がそれなりの笑顔で笑おうものなら、「俺、こいつに一生尽くせるかも」などという感情が高まり、可愛くない森田を見つめるその目は、求愛しまくり発情しまくりの獣の目と化すのである。

森田。森田。こうやって文字と言う形で森田と打ってるだけでやはり興奮は高まる。オナニーしたくなってくる。そういう自分を見つめなおせば見つめなおすほど、俺ってやっぱり変態なんだなと妙に納得してしまうのである。もはや森田という単体を愛しているのではなく、森田という名前を愛してしまっている。あたし、森田が好き。


まぁこんな感じで相変わらずキチガイな日記を書いて毎日平和に過ごしている私ヒロですが、今日も相変わらず己の生命維持と滋養強壮の為、メロンパンという神が生み出したパンのkisekiを買うべく、コンビニエンスストアーに行ったのですよ。

OLがドトールコーヒーでミラノサンドを食べるように、俺は俺でローソンに行ってとっておき宣言とか書かれた訳の分からないパッケージのメロンパンを食べるのが日課な訳だが、今日そんな俺に事件が起こったのですよ。事件事件!


メロンパンが置いてないのですよ!


多分これは俺に対する嫌がらせだと思った。ちょっとオタクっぽいからってからかってやろうというローソン屈指のいじめだと思った。いつもいつもローソンに来てメロンパンだけを購入して立ち去る尋常ではない行動に嫌気がさしたのだろう。同じメロンパンを何分もかけて品定めする俺の姿を見て「け、またメロンパン男来たよ。気持ち悪いなぁー」だとかおもむろに指なんかさして変なあだ名とか付けて言ってたんだろう。

いやな、別にいいんだよ。マジでそういういじめ大歓迎だよ。言っとくが俺も俺でこのローソンにどれだけ貢献してきたか理解を迫りたいよ。メロンパンだけでどれだけの売り上げ出してるんだと深く迫りたいよ。だからもうね、大歓迎。もうローソン使わない。っていうか、もうヤマザキ製パンの作ったパンもう食べない。みんな死ねばいい。店長死ね。6回死ね。

だとかまさに引きこもり3年の修羅場を迎えた少年のように愚痴っていますと、目の前にガチャガチャとやってくるローソンの納品屋。パン箱とか無駄にいっぱい積み上げてやってくる納品屋のおっさん。

いやはや、それはもう喜び狂ったのですよ。ついさっきまで焼いてましたと言わんばかりにメロンパンが納品されてくるのですよ。

105円出すよ。いや、俺はこのメロンパンに157円は出すな。間違いなく出してる。

期待に胸膨らませ、今か今かとメロンパンを待っていたのですわ。今の俺っていったら金ねーぞ。豚丼はおろか、缶ジュース一本まともに買えてないからな。カナダ行きとか決まった瞬間、ポケットマネーにまで制約ついてるからな。そんな俺がメロンパンを買うというのは、どれだけ大きいかわかるか?なおかつお釣りを緑の募金(すなわちお金を大切にしない日本人の非心の箱)にお釣りの5円とか入れちゃうようなそんな男の苦悩がわかるか?ローソンとかいじめやってる場合じゃないぞ。真剣だぞ。

それはもうドキドキしながら待っていたのですが、一向にメロンパンが出てこない。うん、間違いなくこれは出てこないな。メロン。

ローソン店員ににも裏切られ、その上納品屋のオヤジにも裏切られ、もう誰も信じることなどできなくなってしまった。いっそこのまま、死んでしまった方がいいのではないだろうかと絶望的な精神状態。フラフラと足をちどらせながら、黙って街を闊歩していたのでした。

その時だった、とてつもない激痛が腹を走った。これはかなりデカイ。


朝から馬鹿みたいに牛乳一リットルも飲んでた俺です。牛乳熱いぜ!ガハハハハっとか訳の分からない言葉を発しながら、ごくごく飲みまくっていた俺です。勿論おなかだって壊れます。

普段は自転車で移動を行うこの私なのですが、実は今日に限って朝雨が降るとか天気予報士がほざいてやしたので、今日は久方歩き&電車出勤に転じようかと思ってみたのですよ。そんでもって帰り道、雨なんか全く降ることなく澄み渡る青空。気持ちのいい風。何もかもが間違っている気候。

こんな気持ちのいい日に自転車使えないだなんて有り得ない。などと思いながら電車に乗り込む俺。いやな、満員電車、痴漢、オヤジの油臭、けばい女の香水、忘れ物の傘、どれをとってもこう日常の粋な演出というのは好きで、俺なんかも電車の中で新聞なんか読みながら長い椅子に座るってかなりリッチな感じでめっちゃイケてるやんとか思ってたんですよ。けどな、やっぱり自転車で出勤したい。自転車で家に帰りたい。

そんな無理矢理感を抑えながら電車を降りて違う会社の電車に乗り換えようとした時、重大な事実に気がついた。俺、金ねーじゃんか。

財布の中には見事に157円しかない。途方にくれる俺。家に帰る電車代が無い。せっかくいい天気なんだし、歩いて帰ろうと青空を目の前にして爽やかな気持ちになれる俺。そんなこんなで歩いて帰ってコンビニでは裏切られるわ納品屋のオッサンには裏切られるわでいきなり絶望的な状態。でもって今度は腹への激痛ですよ。

最悪だった、歩いて帰るとか最悪だと思った。近くにトイレはおろか、俺みたいな下等な生き物が立ち入ることを許してくれそうなそんな建物がひとつたりとも建っていない。いっそのこと野グソしてやろうかと思ったのですが、そうしようにも家族連れのファミリーやら二人乗り自転車やってる違法紛いのラブラブカップルが歩いている道。そんな場所で野グソなんてしたら人間としての人生が終わってしまう、そうなるぐらいなら我慢してトイレのある場所まで行こうかとそう思ってみた次第なのである。

しかしいつになってもトイレのトすらみつからない。公園に行っても公衆便所一つない。無情だ。世の中あまりにも無情すぎる。メロンパンはおろか、ウンコすらもまともにさせてくれない世の中を俺は恨むね。いっそこのことこのまま死んでやろうか。

全身の毛が逆立ち、額からは汗が流出し、首から下は滝のような冷や汗が流れる。歩き方すらももはや正常な姿を失い、ホイミを使うMPすらも失った勇者のように、惨めな歩き方をしていた。生まれてきたこと、後悔したかも。

ふだんこういった事件に遭遇しますと、純正テキストサイトの血を引いた私は「お、これネタになるじゃん」だとか思いながら、落ち着いて体の変化と精神状態を観察するのですが、このときばかりは体の状態を捉えるほど平常心を保てなかった。腹で巻き起こる直下型の痛み。激痛。鬼のようだった。

そうしてしばらくして巨大な痛みの波と戦いながら、やっとこさ駅らしき建物を発見。駅にトイレが無い。そんな非道なことはまず有り得ない訳で、ここなら間違いなくトイレはあるだろうとそう確信した俺は、いよいよ腹にたまったソレを出す準備に入ってた。駅にトイレが無かったら、間違いなくその場で漏らしてたと思う。パンツに込み上げる暖かさ。それを肌で感じながら、ウンコ漏らしの悦楽を発見し、本物の変態としての俺を見出してたと思う。

トイレはあった。なんかもうトイレの10メートルぐらい前からチャック開けてた。多分これをそこらの婦女子が見たら、変態紛いと勘違いし、すばやく警察へ連絡なこと間違いない。

トイレの中に入り、大便のコーナーに差し掛かったとき。とんでもない現実を目の当たりにした。


満席!!


腹の中のそれはもうすぐそばまできている。無駄に足フミしながらトイレを待つのだが、そんな俺を知ってか知らぬか、いつになっても開くことの無いトイレ。反泣きになりながら、ひたすら待ち続けるトイレ。

込み上げてくる糞欲に打ち勝ちつつ、なおかつ消えつつある理性と意識をただ維持しながら、トイレをひたすらに待ち続けていると、同じ状態の男子がもう一名トイレに入ってきた。

彼も俺に同じく、ズボンのチャックがもうすでに半分まで開いている。彼も相当苦しいところだろう。だが、この世界に情などいらない。たとえ相手がブッシュだろうがパウエルだろうが、関係ない。小泉だったらなお関係ない。順番は順番だ。

そう思い待っていると、ガチャーーーという水の流れる大きな音と同時に、扉が大げさに開く。

やった!!心の中でそう思った瞬間だった、隣にいたズボンのチャック半開きの男は、俺の横をすばやくキープ。そして次の瞬間、俺が入ろうとしていたトイレにいともあっさりと入る。まさにこれが普通と言わんばかりの勢いでスムーズに入る。

カチャ!鍵の閉まる音と同時に、扉は開かなくなる。俺は怒りのあまり、ドアを叩きまくった。叩き狂った。俺は平常心を失い、この男の無情さと、世の中の無情さを恨み怒りまくった。ただただ、俺はドアを壊れる勢いで永遠と叩き続けた。黙って。

そういえばその男、この駅の清掃員だったらしく、名札をつけていたな。

たしか、森田って名前だったかな?


そう思うと凄い怒りが、とどまることなく、ひたすら、永遠に、込み上げてくる。


全世界の森田さんは何にも悪くないのに、ここにいた清掃員の森田さんが悪いだけなのに、俺はあらゆる森田を恨んだ。俺の頭の中で、森田=人情よりも糞欲を取る男、っと刷り込まれ、油性マジックのように消えないように刻まれた。

森田は嫌いだ。


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