ふくらはぎ


2004/05/01

彼女はいい女だ。

アルバイト初めてなのにも関わらず、物覚えが早いのですぐに戦力になったし。若干小さな体、小さな顔にクリっと大きな目。見た目だってさることながら、大人しく清爽な性格にもかかわらずツッコミを入れる時はスパっときめる性格良。キレのあるツッコミで雰囲気はいつもなごやか。

そんないい女な彼女がある日突然、男性とお付き合いを始めた。

しかもそれがよりにもよって、同じアルバイト内の7つも年上の男性。見た目はかなりオタク系。バービーの洋服セットを一式集めているようなそんなオタクではなく、むしろ歴代ガンダムを全部プロフィール付きで言えそうなそんなタイプの男性。しかしその爽やかな喋り口調と哀愁漂う雰囲気で、今のところ彼をオタクと言い切る野郎はいない。メガネとデブ、あと一つ要素が備われば、確実にオタクの称号を得ることが出来るだろう辛うじてギリギリ平民を守りきるそんな彼である。

確かに彼田中さんは、お兄さんっぽい。年上に憧れる女性だったら、そのお兄さんオーラにトキメキを憶えるかもしれない。ただな、なんでよりにもよってそれがアルバイト内の組折の吉岡さんなのかは妙に納得いかない。あと一つでオタクに変貌してしまうようなそんな野郎とお付き合い始めてしまうなんてマジで許せない。世の中狂ってると思った。マジで狂ってると思った。死ね田中。死ねこの皮オナニー野郎。むしろ俺が死ぬ!

っとまぁこんな視野の狭いインターネットで無駄に奇声を発したところで、やはりこの切ない思いも届くことなく、田中さんと吉田は幸せそうにバカップルライフをエンジョイしやがる。なんともやるせないといった次第だ。

今年で26歳になった田中さんは、地元でも有名な大学に通ってる。だがその実態は、浪人して入り2年留年。そして今年3年目の留年が確定したと言うどこまでも酷いダメ学生っぷり。確かに有名すぎる学校は辛うじて行けたのだろうが、3年留年という俺よりも修羅場を迎えた状況にも関わらず、それを感じさせないような熱い恋愛を楽しむスゲー根性。一年間無駄にしてしまった俺は恋人も作らないで必死に仕事をしているというのに、四年も無駄にしながらまだ熱い熱いロリータな恋愛をしようだのそんな調子だ。世の中価値観というものは、人それぞれなんだなぁと妙に納得。

さてさて俺が田中さんなら大事件だ。

7歳年下のロリータとお付き合いだなんてそんなもん大事件だ。


そんなもん妹よりも更に年下という有り得ないレベルのロリータっぷり。そんなもん非常にロリーな吉岡さんには、年上のシュールな紳士に見えることこの上ないのだろう。やさしいやさしいお兄さんと楽しくデートをしてそんなもん幸せいっぱいといった具合だろう。

だがな、俺が7歳年上の田中さんだったら。こんなにも小さくて可愛い妹よりも更に小さくて可愛い女の子を汚したくて汚したくてたまらない。純粋で透き通ったものに汚れを注ぎたいという男性諸君なら生まれながらにして誰しもが抱いている本能が働いて働いてならないといった次第である。

精神と肉体の間で戦い続ける葛藤。愛を取るか肉欲をとるか。目の前にいるのは愛している女性だ、だがそれ以前に彼女はおいしそうな7歳年下の女の子。それはもう汚れの無い真っ白な女の子。確かに彼女を愛して愛して止まないのだが、同時に彼女を汚したくて汚したくてたまんないという肉欲というダークネスな一面が見え隠れしてならない。

いいなぁ。羨ましい。めっちゃうらやますぃい。俺も欲しいってこんな彼女。

少女を抱くってこういうことなんだろうな。同じロリータ同志としてはめっちゃ羨ますぃい。7歳年下だぞ。アレだぞ。下手したら犯罪だぞ。

外を歩けばついさっきまで学生服着てたようなロリータと体中からオタクっぽさを放つデブメガネが一緒に手をつないでるのだぞ。たしかに今時に若者からすれば、「なんだコイツら!ウゼェ!めっちゃうぜぇ!皮オナニー野郎がなんでだ!死ね!そして死ね!」と同じオタクからひんしゅくを買う様な発言がバリバリ出てきそうだが、かろうじて毎日石鹸で体を洗い月一回散髪に行ってる彼でもオタクっぽいのは事実。オタクの希望の光となることは間違いないだろう。本当に有り得ないくらいに絵にならないのですよこれがまた。


しかしこのカップル、面白いのがかなり人に隠しているという部分。

恋愛は恥ずかしいものという観念がかなりあるらしく、その昭和の恥じらいっぷりから人に言うことを断固としてお互いに禁止している模様。手を繋ぐことすらも頬赤らめて身悶えしながら歩くような恥じらいっぷりの持ち主であることは確かであろう。事実、街角でこの2人を目撃したという人物がいたのだが、手は辛うじて繋いでいたのだが、その頬の赤らめ具合と間合いの取り合いは、中学生さながらの恋愛そのものだったらしい。美しい、実に美しい愛だ。

そんな愛を汚したくなるのが私ヒロさんなのです。

飼い猫がオヤツの鰹節を欲しいと何度もねだってきているのにいつになっても与えず、「何が欲しいの?ちゃんとお口で言いなさい。○○が欲しいです。って言いなさい」などとエロビデオのセリフのような言葉を投げかけるようなドSっぷり。そんなヒロさんなのです。

今日は知らないふりをして、吉岡をからかってみようと思ったのでした。


−アルバイトの最後。先に上がった吉岡は、田中さんを待っていました。−

ヒロ登場。

「あれ?吉岡。なんで残ってるん?誰か待ってるん?」

っとまぁ誰もがわかってるような黙認のセリフをさらっとエレガントに吐く俺。いやいや、そんなん田中さん待ってるに決まってるやん!っと誰しも心に思っていることをさらっといい払う俺。

「いや、あの・・暇だから時間つぶしてるんです。」

その悶えっぷりに俺の本能がうずく。可愛い、マジで可愛い。リアクションがマジで可愛い。ネット流で言うと、かなり萌えた。こんな可愛いリアクションをいきなりキメてくれるなんて、なかなか粋なことしてくれるじゃねぇか。

「ふーん。帰ったら?電車無くなるで。」

とりあえず帰ることをオススメした俺。今から彼氏の田中さんとクルマでドライブだというのに目の前の訳の分からないキチガイ男に「帰れ!」だとか強要される吉岡。「帰れ!!帰りまくれ!帰りまくれ吉岡!」だとかもうそんな風に言われたにも等しく、俺なら間違いなく泣き始めてる。うん間違いなく俺が吉岡ならこの二言目で泣いてる。

「いや、あの実は山田さんを待ってるんです。」

おおっと、友達待ち合わせ作戦に変更だ。物凄い勢いで話題が反れる!いやはや、まさか女友達を待っている作戦に出るとは、なかなかヤルじゃねぇか。さすがいい女だ。俺が見込んだだけのことはある。

だがな、大きな失敗をしたぞ吉岡。オメー山田さんとそんなに仲良くないじゃねぇか。なんとかギリギリ携帯の番号は知ってるらしいが、携帯のアドレスの存在はおろか、同じプリクラにすらも写った事の無いような彼女と仲良く待ち合わせですか?有り得ないなぁ?有り得ねぇよなぁ?どうなんだ吉岡!!

次第に俺のS本能がさわぎ、手に足に頭、全ての部品(及び下半身)がしびれるほどに興奮を始める俺。うずく、俺の中で何かがうずく。

「そうだよな。山田の誕生日だもんな」

もちろんそんなもん知りません。山田の誕生日なんていつだったかなんて知りません。だが、余りにも山田との交流の少ない吉岡。そんなもん彼女自身も誕生日なんて知ってるはずがありません。それをいいことに物凄い勢いでウソつきまくる俺。山田とは俺のほうが通じ合えてるとアピールする俺。

「そうだっけ?先月ですよね?山田さんの誕生日」

ええ物凄い勢いでひねりつぶされました。圧倒的勢いで見事潰されました。この女やはりデキる。さすが俺の見込んだ女だ。田中にはもったいない。

「あ、そ、そうでしたっけ?」

物凄いレベルで叩きのめされた俺は、吉岡さんを潰しそのリアクションを楽しむはおろか、逆に自分が喋り辛い状況を作り出し一向に会話が再スタートしない空気。やられた。こればかりは、2人の愛の強さに負けた。2人の愛の強さは、俺という大きな壁すらも軽く飛び越えるといった具合なのだ。

完敗だ。悔しい。嫉妬する。


アルバイト先のミステァードーナッツの制服といえば、そんなもんウン十万で取引されているようなシロモノだ。そんなマニアックなコスチュームプレイを意図も簡単に実現させてしまうだなんてマジで悔しい。めっちゃむかつく。

そう、それはイメクラなんかで擬似的に作られたプレイではなく、実際生のコスチューム女を堪能しプレーすることのできる至上の悦び。男子のこの上ない快感なのである。

一生懸命ドーナツを売っている彼女に凄い視線を送り、頬赤らめ羞恥心の塊となっている彼女の姿を堪能するも良し。洗い場に連れ込んでバレないようプレイするも良し。ドーナツを口に押し付けて喋れなくなる姿を見て興奮して楽しむ変態プレイも良し、何でも可能とする生コスチュームプレイ。マジで至上の悦び。

いいなぁ、すげー羨ましい。いいなぁ。俺もやめる前にこんなプレイやりたかったなぁー。


そんなことを、4ヶ月前に辞めたミステァードーナッツのアルバイト先にOB訪問した時に、ついつい口が滑ってカミングアウトしてしまった。

「少し短めのスカートに年中半そでの性服。そそられますなぁー」などとかなり熱を込めて力説していた俺。辞めたバイト先だと言うのにまだまだ現役に負けんばかりの勢いで熱く熱く語る俺。そんな俺に一言返事が来るのだった。

「アレだおめぇー。山田とつきあったれや。」

山田っていったらアレだ。ダルマか?いやダルマに手と足がついたようなそんな女だ。

「ごめん。俺無理だ」本人が聞いてたら思わず怒り出しそうな発言をサラっと言い払ってしまう俺。そんな俺に友人は言う。


「ヒロだったらつきあってあげてもいいって山田が言ってたぞ。」


「つきあってあげても」とは何ですか。失礼な。この世界のミスターであるヒロに対して失礼な。まぁ確かに吉岡が「別にヒロさんだったらつきあってあげてもいいんだけどね。仕方ないからつきあってあげるけどね」って言われたらええそれはもう凄いスピードで「お願いします女王様。付き合ってください」とその場で土下座し、その小さな足で踏みまくられて、俺も俺で快感で身悶えるような悦びを感じる次第。けどな、山田だぞ。あの山田だぞ。山田のくせに偉にしやがって。

「ごめん。俺あいつじゃ立たなねぇや。制服きてても裸になっても立たねぇや。マジごめん」

「なんでや!ヒロと山田お似合いやん!めちゃめちゃお似合いやん!手つないで歩く姿とかスゲー絵になるって!!!!」とまぁビックリマーク四つもつけていいやがるのですよこいつら。「なんで?山田さんのどこがいやなん?」その言葉に俺は考えること無く言うのだった。


ふくらはぎ。

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