禁酒インポシブル

2004/03/29

ある日俺は鏡に映る己の姿を見て思わず言葉を失った。

「俺も中年の症状があらわれたと」

その日は本当になにげなく、風呂上りパンツ一枚で自分の姿を鏡でみたんですよね、全身鏡で。そしたらなんとまぁお腹がすばらしいくらいにたるみはじめてるじゃないですか。デブだった俺も高校時代の苦行とフリーター生活の荒行に耐えてなんともまぁ引き締まってくれて逆に押したら折れるんじゃねぇの?っとまで言われたのに、なんとまぁたるみはじめてるじゃないですか。これは相当危機感を感じたね。

理由なんてもう考えなくてもわかった。アレだよ。ビール。間違いなくアレしかない。

仕事終わった後のビールって最高なんですよね。この前だって最寄のダイエーでアサヒビールを半ダース買いしたんですけど、あまりの童顔っぷりに店員が焦って「キミ高校生でしょ?お酒買っちゃだめでしょ?」っとか事情徴収まがいのことやってきてそれでもひるまず「違うんですけど」っとかちょっとキレぎみで言ってやったりなんかして無理矢理購入ですよ。まぁ高校生じゃないとはいえ、まだ未成年なんですよね。だからビール買う時には本格的に苦悩する訳ですが、それでもまぁなんとか必死になって買ってますわ。エロ本を買う中学生のように無理して年齢引っ張ってがんばってますわ。

でもな、美味しい物ってのは大抵体に害なんですわ。異様にコレステロール高かったりだとか、カロリーだってモリモリと高かったりだとかしてですね、絶対に体に良いことはない。だからこそ美味しいのですわ。ビールもやっぱり美味しい美味しいって飲み続けていくうちに、腹のたるみに変わったのですよ。俗にいう「中年腹」

見れば見るほどに醜い腹のたるみ。そのたるみを見たとき、俺は決意したのですわ。ビールを切ろうと。

俺ってナメてかかってた。ビールを切ることなんていつでもできる位に思ってた。正直酒飲み始めたのってフリーター始めたくらいじゃないですか。たかが一年くらいですよ。だからね、そんなもん簡単に禁酒なんかできると思ってたんですよ。

けど、見知らぬうちにアルコールは俺の体に依存してたみたいなんですよ。物凄い葛藤が体の中で始まったんですよ。

HPを更新していなかったこの暗黙の5日間。一体何が起こっていたのかを今から書き綴ろうと思う。

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禁酒生活一日目

朝起きたら俺のパソコンが音を発しなくなっていた。

OS入れなおしたりだとか色々やってたらネット接続も繋がらなくなっていた。たかがパソコンが壊れた位でHPの更新を怠るだとか管理人として最低だと思ったが、俺はいつでも最低だからまぁ許されるだろうとけっこうあっさりと諦めた。

パソコンの画面に目が疲れてしまった俺。それを癒そうかと冷蔵庫のビールコーナーに体が向かったがその瞬間物凄いことに気が付いた。「そうだ、俺禁酒してるんだった」と。いつも最低アサヒビール(350ml)が3本は冷えているはずの冷蔵庫の一角には何も無かった。癒されない癒されないと物凄く切ないテンションになったが、コレくらいのことで禁酒をやめるかと再び気合が入る。

なんとしてもこの決意を一日で終わらせるわけにはいかない。

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禁酒生活二日目

朝起きたら物凄く喉が痛かった。どうやら風邪を引いたらしい。

仕事から帰るとさらに悪化していた。すげーお粥さんが食べたくなった。自分で作ろうと思ったけど、自分の為に自分でお粥さん作るとかなんか切なくなってきた。でまぁ、風邪引いてる時に優しい一声&お粥さん作ってくれるような女性を急遽HPで募集したくなってきたが、オチが弱そうだからあえてやめといた。嗚呼、風邪引いてる時にお粥さん作ってくれる女性の一人くらいものにしてぇなぁっとか一瞬思いながら一人お粥さん作ってました。

そんな一人男。風邪が助けて本格的にテンション落ちてきたんですよ。で、それを癒そうかと冷蔵庫のビールコーナーに無意識に体は向かっていたが、すぐさま気が付いた。「そうだ、俺禁酒してるんだった」と。ビールコーナーがあったであろう冷蔵庫の一角には、母の実家から送られてきたジャガイモが場所を埋め尽くしていた。切ねぇ。

なんとしてもこの決意を二日で終わらせるわけにはいかない。

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禁酒生活三日目

朝バイトしに職場に行ったら、いつも仲の良かったバイト仲間がいなくなっていた。

以前からやめるのは決定していたが、何故か仲のよかったはずの俺には一報も無かった。実は仲がいと見せかけて一番仲が悪かったのかもしれない。社交辞令的なモンで俺と仲良くしていたのだろうか!?だとかなんか色々なことが頭をよぎる。周りの友達は「今までありがとうなぁ」とか「次の職場でも元気してろよなー」だとかやめる前の暖かいトークを楽しんでいたんだろうが、そんなことを知る由も無い俺には挨拶する理由もない。なんかすごく壁をみたね。職場の

そんな窓際族男な俺。心を癒しに懸かろうかと冷蔵庫のビールコーナーに連鎖反応的に向かってたが今回ばかりは開ける前に気が付いた。「そうだ、俺禁酒してるんだった」と。モルツの一缶くらいは入っててもおかしくないであろう冷蔵庫の一角には、全く処理できていないジャガイモが芽を生やしていた。素直に喜べない。

なんとしてもこの決意を三日坊主で終わらせるわけにはいかない。

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禁酒生活四日目

朝バイトに行って、職場の仲間に「実は俺、禁酒してるんだ」っと切羽詰った声でカミングアウトしてみた。

「は?ヒロが禁酒?有得ねぇ」などという失礼極まりないリアクションが多数。まぁそんなもんはある程度予想してたからどうでもいいが、一番気になったのは次の発言。「実は俺も禁酒したことがあったんだが、たった一週間ビール飲まなかっただけで内臓が悪くなってきてね。体中がかゆくなってきたんだ。本当に、人間飲みたいときに飲むのが一番だよ。がまんすることはよくない」

その言葉を聞いて俺は驚いた。オナニーをガマンするのは体によくないって話は良く聞かされたが、お酒を我慢するのは体によくないなんて話初めて聞くじゃないですか。ガマンできるのが人間の特徴だっていうけどそもそもこんな荒行する必要があったのだろうか?こんなに辛い思うする必要なんてあったのか?・・・っとまぁ色々な頭をよぎったんですよ。

で、考え疲れた俺。気が付いたら無意識のうちに最寄のダイエーの酒コーナーにいた。アサヒビール(350ml)の半ダースボックスを手に持ち、パートのオバちゃんにいつものように年齢チェックを受けた時ふと気が付いた。「そうだ、俺禁酒してるんだった」しかし今まさにお金を払おうとサイフを開いている瞬間。今更どうやって断れと。

そんでまぁ俺はその半ダースのビールを持ちながら家に帰った。そのときには冷蔵庫の中にビールを置くポジションなんてどこにも無かったが、俺は無理矢理アサヒビールを置けるスペースを確保した。グラスを手に取り、狂うようにビールの缶を開ける俺。でもって狂ったようにグビグビ飲む俺。野性的に。激しく。強く。


っといった具合で俺の禁酒はなんとまぁたったの三日で終わってしまったのですわ。三日坊主そのものなんですよ。ちなみに五日目の今、オヤジにドンドンビールとか注がれてガブガブのみ狂うのですわ。親子そろって酒飲みな俺たち。禁酒の影響でリミッターはずれて勢い余りまくってテンションヒートアップ。自制の傷が久しぶりにきかなかった。もう何がなんだかわかんなくなる勢いだった。

そんな状態でもまぁなんとか日記書いてるのですが、なんか凄いことを悟った。ガマンは口に出した時崩れ去るモンなんだって。

あからさまに俺に禁酒を阻止しようと口から出てきた訳のわからない言葉が本当にことみたいに感じるじゃないですか。飲んだ瞬間正気になるとか有得ない。俺の腹のたるみ。このたるみを消すには、まず口が堅い黙って背中で物を言うようなハードボイルドな男になることからはじめなければならないと。しかしながら19歳にして中年腹は痛い。

酒をガブガブ飲む父。そんな父が酔っ払いながら一言言ったんですよ。

「俺もそろそろ体のこと考えて禁酒しようと思っている」

いきなり初日から禁酒をカミングアウトし始める父。しかももうすでに酔っ払っている父。俺と同じ血を引いてる父だ、間違いなく禁酒は三日坊主で終わること間違いなしだ。そう確信しつつ俺は言ったんですよ。「ガマンすることはよくない」


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