ハーレムのある風景

2003/09/16

ここに一人、鰹節の心というHPを作る男がいます。

鰹節の心はまさに世界を支配し統制する力となる訳です。いつか、日本一の栄光をつかむすざまじいHPになる訳です。そんな立派なHPの管理人も、時には息抜きをしないと干からびて死んでしまいます。

そういった具合で管理人ヒロ氏は、友達と飲みに行く約束をしたのです。

はっきり言ってね、高校とか中学とか行ってしこたま勉強してる学生かたがたには申し訳ないけど、「お酒が20になってから」この言葉の意味理解できた。働いて働いて、尚働いて、死ぬ気で働いてボロボロに疲れた体にビールを注入する。そのときね、初めてわかる。ビールの真の味を。

近年老化のすすむ俺。ビールなしの生活とかマジで考えられないくらいまでに追い込まれた俺の体。そんな俺が友達から酒を飲もうとか誘われたのだ。断る理由などどこにもない。むしろ断りたくても体が反射的にそれをさせてくれない。

で、ワクワクしながらその日を待ったんです。しかもこの飲み会、高校時代の仲良かった友人どもで久しぶりに会おうやーみたいな飲み会なんです。同窓会みたいな意味も含まれた飲み会で、俺の期待は膨らむばかり。早く懐かしい友に会いたい。で、ビールが飲みたい。

その日はすぐにやってきた。っていうか、2日後だった。待ち合わせ場所に走って向かう俺。ワクワクとか言ってた癖にやはり30分遅刻してる俺。バイトは遅刻しなくても、友達との約束は遅刻するのが決まりみたいなもん。早く待ち合わせの場所に行きたくても体がそうさせてくれない。

結局集合時間から1時間くらいたってからみんな集まった。俺自身はまだ来ると思ったんだけど、これで全員らしい。

俺以外全員女。男1人に女6人。あからさまに間違いのあるシチュエーション。せめて男はもう一人くらいくるだろうとなんとなく期待はしていたが、待ち合わせ時間一時間たった時点で決定事項となった・・・


俺のハーレムが。


未だかつて男一人で女6人を制したことなどあっただろうか。すぐさま俺はこう悟った訳ですよ、「ああ、ここが俺の人生の峠なんだな。」っと。人間の絶頂というやつが、まさにいまめぐってきたのだなっと。

で、女子の中から約一名、プリクラを撮ろうなどと言い始めるんですよ。当方女子に囲まれてプリクラを撮るなどというシチュエーションなど初めて。おそらく前世でも後世でも絶対に無い。画面めがけてもう満面の笑みをくれてやる俺。右下20度くらいから上目遣いでピースとかしてやがんの。ほんと2日後なんかに見たら速攻抹消したくなるようなそんな伝説の一枚をよりにもよってこんなところで作るんですよ俺。

プリクラとった後もそのままテンション任せに近くの年下女とニタニタしながらしゃべる俺。ああもう見てらんない。何やってるんだ。オメェは鰹節の心といういずれは超有名になるHPの管理人。それがなに鼻の下伸ばしてでれでれと。もっと精進しろって。

で、俺のハーレムオブレジェンドはまだまだ続く。続いて居酒屋到着。一時間もかけてプリクラとってたという集団行動の要領の悪さ。まぁそんなこともあってやっと到着した居酒屋。やっとビールが飲める。このときばかりは色ボケとか関係なしに純粋にビールばかりのこと考えてましたね。

気合入ってるおなごはそれなりにビール。ぶりっこなやつはそれなりに洒落たカクテルをチョイス。準備は全てそろった。いざ・・


乾杯!

杯を友と交わす。なんだかんだ言っても高校時代を思い出し懐かしい気分になれた。っといっても7割以上まだ学生の奴もいる訳だが。

女だらけの空間。無論話にはあまり参加できるわけもなく、すみでダマってビール飲んでました。ビールがあるからなんでも許せた。このときばかりは。

いくらか時がたっただろうか。ふと目の前の女子を見ると、それはもう凄い剣幕だった。俺はすぐに察した。・・確実に、修羅場だと。

次の瞬間女子は口を手で覆いトイレに走った。野次馬しにいく女子も同時にトイレに走る。

で、彼女がトイレから戻ってきたのは2時間後だった。

かなりのつわものだった様子を青ざめた顔が物語っている。

結局予定していた2次会のカラオケはキャンセル。まぁキャンセルの一つや二つ慣れっこだからもうね、全然悔しくなかった。自転車で家に帰ってる時辺りに人がいないの確認して大声でカラオケで歌う歌バッチリ練習してたのは秘密だが、誰が何言おうとも今彼女は大変な状態なのだ。誰も文句など言わないはず。

家に強制送還する為、タクシーを確保。抱え込んでタクに乗せようとした時、嫌そうな顔したタクシードライバーが「ちょっとまったお客さん!ゲロ吐くお客さんは一番左に乗せるのが常識よ。それともタクすぃの中でゲロ吐いちゃうつもりかい?」っとなかなかご立腹のご様子。まぁとりあえずここは言うこと聞いて左に乗せる。もうこのときばかりは文句など言えない。態度の悪い運転手の手でも猫の手でも何でもいいから借りたい状態。

しばらくして俺も興奮からさめてきた、ふと周りの様子を見ると、先ほどのハーレムでは味わえぬ何か違う空気を感じた。

さっきまでの俺は幸せだった。たしかに幸せだった。もう何もかも忘れる勢いで、平常心だって失う勢いで幸せだった。読者の男集団が半ギレしようと何しようと幸せ幸せと連呼できる程あふれんばかりの幸せだった。が、

今回ばかりはやはり何かが違う!

そりゃアレだぞ、飲み代だって何故か要領の良すぎる空気と雰囲気でなんとなく全部払わされたぞ。で、女子のゲロ吐く為のエッチケットな袋だって何故か要領の良すぎる空気と雰囲気でなんとなく持ってるぞ。そう、なんとなくを利用して俺を見事につかわれ男に仕上げてるぞ。

だがな、そんなの全く関係ない。むしろもっと恐ろしいものを俺はそこで見たね。


女子がオール化け物顔。

細かく説明し始めればキリが無さ過ぎる訳だが、あえて説明すればそれはもう惨事なのだ。惨事。化粧が顔の上で魔法陣を描くように。幼稚園児が画用紙の上でお父さんの絵を書くように。ぞうさんが親子で水遊びをしているようなまさに芸術的な作品が彼女ら自身の顔の上でお祭りを始めていたのだ。

いやはや、しかも現在進行形なのである。未だとまらぬ汗の勢いに乗って緑やら青やらのメイクが彼女らの顔をスッピンより酷いものに変えている。いくら人生汚いものばかりを見続けた俺でもまことに耐え難い姿なのである。彼女らのスッピンは見たことあるぞ。まゆげが3ミリくらいしかないのっぺらみたいなスッピンを。だがこのような変わり果てたすがたにもなると、もはや他人。原型すらもとどめていない。

で、誰か一人くらい気がついて化粧治すのかな。ってちょっと胸のうち期待してたんですよね。やっぱ俺男じゃねぇか。れっきとした玉2個くらいついた男。誰もが俺を見間違えることなく男と呼んでくれる男。その俺がですね、今このタクシーという小さな個室で嬉し恥ずかし共にひしめきあってる訳ですよ。

にもかかわらず何も反応がない。いや違う、彼女らはとっくに気がついてる。己の顔の上の惨劇をとっくの昔に把握している。

彼女たちの観念から言わせて貰えば、「俺がいるけど化粧を直さないでおこう」ではなくむしろ、「俺だから化粧直さないでおこう」なのである。

彼女たちにとって、所詮男と言っても俺しかいない空間。そんな空間で何を気にするというのだ。むしろいつも家で履いてるジャージーでも構わないわよっと言った次第なのだ。もっとはっきりさせておけば、周りに通行人がいるから私たちは化粧をしているのであって、周りにヒロさんしか男がいなかったら化粧などどうでもいいのよっといった具合。メシ時に妹が兄の前で大また開いてあぐらでどんぶり飯を食っているすがたと例えても足りないくらいである。通行人>ヒロさん。これが彼女らの不変の方程式。

むむ、俺はコケにされている。確実に男としてここに存在していない。

そう、俺は女特有の精神的攻撃を受けたのである。何も言わずにして心臓を抉るかのような異常なまでの精神的ダメージ。女の恐怖というやつを俺は目の前で見せ付けられた。化粧がぐちゃぐちゃの集団と友に歩くのが恥ずかしいのではなく、むしろ男として全く認識されないまま歩いている男が一人女集団と友にあるいていると思われているかもしれないというマゾ男にはたまんないであろう晒し刑に俺はあっているその事実があり得ない程に恥ずかしい。とりあえず確認しておくが、俺はマゾではない。

響き渡るゲロの音。心の中では、俺の悔泣きの大声が響き渡る。

ただ単にハーレムしても男はハーレムになれない。男が女の6人でも7人でも抱え上げれるような図太さと貫禄あってこそ初めて男はハーレムになれるのだ。そう悟ると同時に己の惨めさを知ったとある日のタクシー助手席だった。

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