サバイバルドーナツ

2003/04/30

俺はミステァードーナツとかいうファーストフードの傍らで毎日働いている。

ミステァードーナツっていったらまぁそこそこに大きなチェーン店だが、実際俺の働いてるミスドっていのは本当に小さな小さなドーナツショップ。余りの小ささに人が集まらなくて休みなしに働いた時代だってあったくらいに目立たないドーナツショップだ。

しかしまぁ新人もそこそこ入り、今はなんとか余裕で運営できるようになり、俺に定期的に休みなんぞもいただけるようになった。忙しかったあの時代も、休みの多くなった今の時代も、文句言わずに働いた。スゲー楽しいから文句の付け所なんて無い。毎日が充実していた。

そんな我が小さなドーナツショップで、今回人事異動があった。

といっても俺たちアルバイトは関係ない。今の店主が少し大きな店に出世して、新しい新人店主がうちに回されたのだ。3〜4年店を支えてきた店主との最後のお別れを惜しむまもなくすぐに新しい店主が回ってきた。

新人と言ってもその店主はかなり年の行ったオッサンだ。40代は軽くいっているであろうかなりのオッサン。それがミスドのアカデミー学校を卒業して晴れて店主になって当店に派遣されてきた。新人店主にみんな興味しんしんだった。

だが・・・そんな店主への興味しんしんっぷりも、さりげなく3日で終わった。

新しい店主は店に入ると同時に己のやりかたを全ておしつけてきた。入った瞬間から「店内連絡」の紙がボードを埋め尽くし、○○してください。○○しないと罰金です。などのあからさまにやりすぎた方法で店の色をどんどん変えていった。

さっきも言ったが、うちの店は人数が比較的少ない状態がつづいたおかげで、人数の足りているそこらのミスドよりは結束力もあり、いじめもまったくおきずみんながみんな仲良しをやっているほのぼの系だ。だがその店主は違う、とりあえず自分が好きな人と自分が嫌いな人とでまったく態度を変えていた。


そしてその嫌いの対象なのだが、どうやら俺のようです。


入って3日目くらいからいきなり俺のことを毛嫌いしている。もうね、みんながいるときとみんながいない時では全く態度が違うわけですよ。何か一言でも俺が喋るものなら、何かと言いがかりをつけて俺に怒りをぶつけてくる。だからね、最近ミスドに言ってもみんなとあのころのようにワイワイお喋りなんかできない。

最初は店主という身分にストレスなどを感じて大変なのだろうと真剣に心配する心もあった。そりゃぁだって店主だからといってみんなが言うことを聞くわけではない。店主という人物と、仕事というのをみてみんながついてくる物だから、そんなもん最初はうまくいくことなんか絶対にあるはずない。

この店主もそうとう叩かれている。そのストレスのはけぐちは、当時最も下っ端をやっていた俺にぶつかっても仕方ないとおもう。自分より確実に下な人間に怒りをぶつけるというのは確実に大人気ないが、店主はじまって一ヶ月で彼の心の胸のうちも変わってくるものだろうと俺自身も彼を信頼していた。

こう見えても俺は高校時代部活で副部長をしていた。店主と副部長じゃそんなもん天と地かもしれないが、俺自身仕切る人間は最初の一ヶ月で何をするかで変わるものだと思っている。仕切る人間の心のデカさも、信頼も、貫禄も全て、この一ヶ月に大きくまかなわれてゆくものだと信じている。

今はこうやって俺にヤツあたりをしているが、40にもなる立派な大人だからすぐに大きな人間になれるものだと。本当に信じていた。

そして時は流れて一ヶ月、いやそれ以上の月日が流れた。

彼のイジメ行為は何故かエスカレートしている。そう、彼は何も変わらなかった。店主という立場をいい風におもっているのか、頭が高く偉そうにしているだけだった。

俺は仕事ができる人間ではないが、仕事に対するポリシーだけはある。好き嫌いを絶対に仕事には引きずらないと。

俺は以前から仕事にプロとしての意識を持っている。だから人の好き嫌いは仕事にもってくるべきだとはおもっていない。無論恋愛だってもちこんではならないと心に誓っている。

しかし彼は俺嫌いをバリバリ仕事にひきずっていた。全体ミィーテングの出席表に俺の名前が無かったり、タイムカードが俺だけ隅に置かれていたりだとか。もっと大人気ないことを例にあげると、俺だけ靴箱に名前を載せなかった。

俺はこういうことが普通にできる人間というのは大嫌いだ。いやね、人間好き嫌いってのがあるから別に俺が嫌いならいくらでも俺に怒りをぶつけてくれてけっこうなのだ。だがしかし彼のやっている行動はあきらかに仕事にまで引きずっている。こんなことを店主という人間でありながら堂々とやっていいのだろうかと真剣に疑う。

そういった意味で、俺自身も彼のことがだんだん嫌いになってきた。こっちは店主はがんばってるのだと思って黙っていたのに、その当の本人がこれでは信頼のしどころがない。どこを信頼したらいいのかわからない。

店主の悪質なイジメはさらに発展をとげて、ついには最終的結末にたっした。


「仕事のできない人間は首だ。」

しかもこの情報がまた、俺に直接言うのではなく周りから耳伝いで回ってきた。俺はどうやら首になるらしい。もうすぐ半年になるだろうミスドライフも、もうすぐ最後ということらしい。人数が少ない時も一日15時間出勤した日も俺はダマって働き続けたが、こんな俺も店主が気に入らないという不等な理由だけで首を切られるのだ。

実際どこができていないのかと聞くと何も語らないらしいし、何がダメなのかと聞くとこれもまた何も語らない。確実に俺が嫌いという理由だけだ。下っ端だからガマンしておいたが、首ともなるとさすがにこっちも黙っていられない。

いっとくがおれはこのミスドにどれだけ貢献したとおもっているのだ。いやたしかに俺なんかよりももっと凄い人はいるかもしれないが、俺はこのミスドでギリギリまで働き続けて友達も失い時間も失い部活も失った。それでも絶対に何か得るものがあるのだとそれだけを信じて働き続けたのだ。

それが店主の40代とは思えないような人間性だけでやめさせられざる得ない状況だ。泣きたくもなる。

周りもだんだんそれに感ずいてきた。店主のやってることのおかしさに気づいてくれて、だんだん店主の信頼じたいもなくなっている。本当にいい仕事仲間を持ったものだと本当に感謝する次第だ。

村八分状態で今だれも店主の言うことを聞かなくなってきた。だがそれも便乗して、さらに店主のわけのわからないストレスとうっぷんはエスカレートしていった。

そして今月、個人面談なんていうものが開かれることになった。

アルバイトの人間の話をもっと聞こうというそういう理由に企画だ。おそらくそのときの俺の首は切られるのだろう。何かと理由をつけてやめさせる気でいるのだろう。

しかし俺はやめたくない。っていうか、やめてなるもんか。もしやめさせられても給料でなくても俺は働き続けてやるよ。ここでやめたら俺は男じゃなくなる。

店主に理由を言わせなければ俺の勝ちだ。むしろ理由もなく辞めさせるのは不等なはず。俺ではなくむしろ店主のほうがやめなくてはならないくらいの問題となるだろう。

そういった理由で今俺は、修行の真っ最中だ。今成長しないともう成長する機会は無いかもしれない。バイトが終わっても仕事を覚えるために遅くまでのこってみたり、休み時間を削って仕事を勉強している。同じランク(ワンスター)の人間のなかでも少し目立てるくらいの実力を来月中には身につけたい。いやむしろ身につける。

もしここでダメだったなら、店主の言いがかりで辞めてやろう。だが、俺は店主に言いがかりはさせない。絶対に仕事のできる人間になって、辞められたらむしろ困るくらいの人間に俺はなる。

もうこうなったら意地としかいいようがない。

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