ちょっとした恋愛小話

2003/04/07

先輩ははっきりいってB線だった。

先輩は可愛い可愛いって言いまくってる。あのイケメンの先輩が怒涛の勢いでキャワイイって言いまくってるんですよ。俺から見たら全然かわいく見えねぇあの子が可愛くて可愛くてたまらないらしい。

まぁ当然だと思う。恋をしたらその彼女が可愛くて可愛くてたまんなくなるのは男の本能なのかどうだかわかんねぇけどそう見えさせるから。非情にブサイク極まりないにもかかわらず恋してもらえるってことは心が実に美しいのにちがいない。

見てるほうまでうらやましいくらいのバカップル。誰が見ても恥らしいくらいにラブラブ。

だがしかしこの2人。キスすらもしたことないキチガイカップルなのだ。5ヶ月も付き合いながらにしてキスもしないっていったいどこまで変態なのであろうか。本当に付き合ってるのかよくわからん。

純情な乙女ゆえの苦しみ。男は苦しくて苦しくてたまらなかったに違いない。好きな女のためなら紳士になれるのが男。彼氏はどこまでも紳士をし続けた。

この日、最後の時がおとずれた。

彼氏はミュージシャンをやっている。以前も語ったが一回路上ライブをやると何万も稼いでしまう俺とは次元の違うすごい人だ。だから当然レコード会社が何社にもわたって彼の取り合いをしている。

勝ったのはエイベックスらしく、東京に行って今音楽活動をしている。本当にどこまでありえねぇ人なのかはわからないが、少なくても恋愛環境として恵まれていないのはたしかだ。ほとんど遠距離恋愛でお互いさびしかっただろう。絶対に。

しかしこの2人に距離など関係なかった。どれだけ離れていても恋愛し続けた。

今日彼氏は東京に帰る日。長いようで短かった一週間も今日で最後。

この一週間ずっと2人は一緒だった、まさに夢のような時間だったに違いない。しかしそんな時間も今日で最後です。

のみに行く約束をしていた。友達とかもみんな集めてみんなでお別れ会をしようとみんな張り切っていた。

しかし俺的にはちょっと辛い。だって丸3日も家に帰らないで飯も食わないで働いてもうクタクタだったわけだ。本当だったら家に帰ってグーグー寝てやりたいノリ。だけど先輩のお別れ会なんてそんなもんほっとけない。

バイトで夜遅く夜中の2時。颯爽と愛車「マグナム2号(自転車)」なんかを走らせて急いだ。2時っていったらアレじゃねぇか。飲み会だって中間から終盤に近づいてる頃じゃねぇか。初めから入って盛り上がった中間あたりでスマートに帰るのが男だと思うんですよ。だから終盤で参加とかありえねぇと思うわけで。

まぁそれでも最後にせめて一回くらい先輩の顔を拝んでおこうと。

目的地に到着。しかしメインの先輩がいない。先輩のお別れ会なのに先輩がいないとかありえない。

聞く話によると、そのお別れ会にいる彼女と突然喧嘩勃発。でもって先輩お別れ会に来ずという展開らしい。先輩が着てないのにお別れ会開いて飲み会やってるこいつらも変人だが、それ以前にオメェら先輩の顔見たくないのかよってツッコミ入れたくなった。急いで損した気分だ。

彼女は酔っていた。「愛してる!本当は愛してるのになんでわかってくれないんだろう。こんなに酔ってる姿先輩に見せられない」って酒で狂っていた。

俺はその場を後にして、先輩を探すことにした。先輩もいないのにバカ騒ぎするほど俺もバカじゃない。先輩の顔を拝んでさっさと帰らねばならないのだ。

いつも路上ライブを開いていたあの場所にいくと、思ったとおり先輩はそこにいた。

先輩と軽く挨拶すると、俺はさっさと帰ろうと思った。だが、このまま帰っていいのか。そんなもんこのままほっといたら先輩と彼女は仲が悪いまま東京にいってしまう。破局決定。

それを目の前にして帰るほど俺も神経は潰れていない。なんとか仲直りさせたい。

聞く話によると、先輩が他の女の人とプリクラを撮ったことに腹をたてて彼女と喧嘩らしい。ほんとうにバカらしい。

たしかに普通だったら彼氏は悪人になるところだ。しかし彼氏はミュージシャン。女のファンだっているのだ。プリクラをとったりするのは本人だって仕事のつもりでやっている。恋とかそんなもん関係なしに仕事のつもりで

しかしそれが彼女には苦痛で苦痛でたまらなかった。ミュージシャンの彼女をやってるわけだから苦しかったのもきっとコレだけじゃなかったに違いない。それが今回爆発しただけだろう。

この機会を期にどんどん彼女の不満を言いまくる先輩。スッピンを見せるのが恥ずかしいから見せてくれない。これは確かに致命的だ。スッピンを見せれない恋愛とか俺は恋愛じゃねぇって断言しとくね。

何度も仕掛けてるのにセックスはおろかキスすらにものってくれない。おそらく彼女は恋愛を何かキレイなものと勘違いしてるのだろう。こういう鈍い女とよく5ヶ月も持ったものだ。

この先輩に彼女の酔ってボロボロになってる姿を見せてやろうと思った。彼女の汚れがそんなにみたいなら見せてあげよう。彼女の汚れを。

先輩を無理矢理お別れ会に連れて行った。彼女は先輩に汚れてる部分を見せたくない。先輩は彼女の汚れに触りたい。

2人は飲み屋に到着。お別れ会会場ではまだ彼女は酔ってボロボロになっていた。

とりあえず彼女の横に彼氏を座らせる。周りの会話もおごつかない。そりゃだって喧嘩してるカップルがいるわけですから。

しばらくして先輩から一通のメールが打たれた。俺宛に。

「すまん。この酔ってる女マジでウザイ。」


俺はその瞬間凍りついた。俺が求めていたのはこんなメールじゃない。先輩は恋愛を知り尽くしているものなんだと俺は信じていた。

俺自身も鈍いのは彼女だけだと思いこんでいた。まったく己を出さない彼女だから彼氏がどれだけ苦しんでいるのかわかっていないだろうと俺は思いこんでいた。

しかし彼氏はなんとキモイといっている。いっとくが彼女はあんたのせいで酔いつぶれてるんだぞ。あんたとの喧嘩のせいで飲めない酒をガブガブのんで真っ直ぐ歩けないくらいにフラフラなんだぞ。そんなこともわからないで歌手やってるのかあんたは。

先輩自身も酔っていたのだろう。ラブソングっていうキレイな物に。キレイなメロディーに乗せたキレイな恋愛詩。

だからこんな彼女の酔いつぶれる姿という汚れを完全に受け入れなかった。すっぴんを見せないとかキスとかセックスしてくれないだとかさわいでたくせに、実際はなんだ。キモイだ。フザけるなって感じだ。

2人そろって彼らはラブソングのような恋に浸っていたのだろう。俺にはそう見えた。


何がラブソングだバカらしい。


俺は帰ることにした。仲直りして欲しいが、もう何もしたくない。

home