牛乳

2003/03/06

「兄ちゃん牛乳買って来て」

ほらね、また俺パシられてるよ。ありえないね。なんで俺がお遣いなんかせなあかんねん。意味わからねぇし。

しかしコレはおれに課せられた使命。夕食のハンバーグの完成度も俺の牛乳次第。もしかしたらうちでハンバーグを食べている途中に「隣の晩御飯」などというわけのわからないキャメラが入ってきて、うちのハンバーグを我が物顔でパクパク食われてしまうかもしれない。ハンバーグの完成度を確認して専門家みたいな人がうちのハンバーグに勝手に評価つけて、うちのオカンの名物ハンバーグをののしってくれるかもしれない。

そもそもなんでハンバーグを作るのかっていうと、不景気なご時世、世の中ではお金がないお金がないとみんな唱えている。我が家もそんなお金がないと唱えている一種の不景気風当たり一家のひとつなのだが、ハンバーグという比較的原価が低く、そしてリッパに高級感溢れる料理と言うのは、お金が足りていない我が家の名物料理になって当然であり、もはや誰にも責めることのできない不可抗力ということなのである。だれも我が家の母を責めさせたりしない。もし責めるなら俺が母をかばってやる、青春ドラマ風味に。

ただでさえ金の足りていない家庭、そんな家庭に「隣の晩御飯」。なんとしてもショボイハンバーグを世の地上波にもらしてはいけない。すでに満身創痍となりつつ我が家、そんな我が家のボロな姿を見せていいのだろうか。いや見せてはいけない、愛情溢れるハンバーグで隣の晩御飯の司会者に涙の一つでもくれてやろう。

母よ。俺はやってやるぜ。なんとしても安くそして高品質な牛乳とやらを買って見せるぜ。己に課せられた重大なる任務「牛乳を購入」を達成すべく、俺は旅にでることにした。と言っても目的地は近くのローソンだが。

はっきり言って俺はローソンで牛の乳を購入する気にならない。公共料金を美しく陳列させるあのコンビニ魂の料金が気にくわねぇ。たしかに夜中の10時過ぎてからハンバーグをこしらえようなどという家庭も世間からしたら意味不明だが、9時を過ぎて最寄のダイエーで牛乳を買うことができないことを武器にそうやって高い料金ふっかけていいのだろうか。いいのか?ほんとうにいいのか?

卵を6個入りでしか売らないくせに、料金はきっちり10個分とりやがる。そもそも日本の冷蔵庫ってのはね、10個入れると非情にデリシャスな感じに見えるように設計されてるわけですよ。したがって日本のスーパーではなるべく10個入りを売ってもらってですね、それを買うことによって日本の庶民はみんな冷蔵庫が非情にデリーシャスになって喜ばしいんですよ。ほんとうはどうだかわかんねぇが、俺は6個ではなく10個であってほしい。そう切望してやまない。

そんなところで牛乳を買うのだ。もっと気が進まないね。まぁあそこには可愛い俺の胸ワクワクさせトキメキ爆発そして胸もFカップ爆発そして俺の股間もそれにつられて爆発な組み折美少女がいるわけだから、今回に至っても許す。全然許す。ローソンって何でかしらないがああいったレジのキャッシャーガールの質だけはいつでも最高品質を目指してくれてるからホント全然許せるね。卵のことなんか忘れてやるよ。

そうこうしてるうちにローソンに到着。牛乳といえばローソン。おれは常日ごろから心にそう決めて生きてるんですよ。なんだかんだ言ってもローソンの牛乳はうまい。日本で最もうまいって俺はいってやるね。ジャパニーズソウルの結晶でしょあれは。普段よりちょっといいものをって思ったら俺は間違いなくローソンに走るね。

いざ、購入!そう思った瞬間だった。俺の目の前でとんでもないことが行われていた。



ローソン只今改装中により休止


おいおい冗談もほどほどにしてくれよ。なんでこういった重要な時に限っていっつもローソン改装中なんだよ!以前俺が「ガリガリ君」が食べたくて食べたくて親の仇といわんばかりに食べたくてやまなかったあの時もオメェ閉まってたよな。どういうつもりだ一体。どこを改装するんだ?なに弄ってもローソンなんて絶対ぇ青じゃねぇか。青以外何もかわらねぇよ。

くそ、俺の重要任務なのに。最高品質の牛乳はここだと俺は信じてたのに。これじゃ隣の晩御飯類のプロの舌をしびれさせるようなハンバーグにならねぇ。畜生。俺はなんて不運なんだ。

こうなったら仕方ない。少し遠くなるがセブンイエブンに行こう。セブンイエブンならなんとかなるはずだ。あそこもそこそこにデッカイ企業だから絶対に高品質な牛の乳くらい置いてるはず。この前インナーネットエクスプロウラでグーグルとかいうHPで検索したらなんか品質向上だか品質苦情だかわかんねぇが質が上がるみたいなこと書いてたよな。信じてやるよセブンイエブン。

遠いのわかってるからトロトロ歩く俺。近いならそりゃ走るよ。けど遠かったら無駄なカロリーじゃないか。なんでゼェゼェいいながら牛乳一つに寿命けずらにゃいかんのだ。意味不明だ。ありえない。18才フリーター牛乳持って走るとかマジで死ねって感じだ。

そうこうしてるうちにセブンイエブンに到着。インナーネットでみたあのセブンイエブンの看板がピカピカひかってる。いい輝きだね。

しかしセブイエブンって会社は本当に凄いと思うよ。だって怖いヤンキーみたいな兄ちゃんが夜中だというのに一人もサミットしてないんですよ。普通夜中のコンビニっていったら、ちょっと調子に乗ってみたいやんちゃな中学生とか、鼻とか目にピアスをスピピピンと開けちゃって、オマケに口にまでスポポンと穴あけて飯食いにくそうな怖そうな輩さまさまがサミットするってきまってる。世の中の定理じゃないか。

しかし誰もいねぇ。ここまでいなかったら逆にこのセブンイエブン実は寂れてるんじゃないかってくらいにいねぇ。怖そうな輩が唯一癒しを求めるべくコンビニの光の前に一人も野党さまさまがいないんですよね。ホントセブンイエブンってスゴイとおもう。

何を一人へ理屈いってるんだ俺は。俺はここに牛乳を買いにきたんだろ。高品質な牛を求めて俺は旅をしてきたんだ。母のハンバーグを手伝うと言う立派な任務があるじゃないか。さっさと買え。そして帰れってかんじだ。

こうしてる間にも腹をすかせた家のクソガキ妹2人がブチブチ言ってるに違いない。「兄貴のヤツ、またヤンキーに絡まれてるんじゃない」「ほんと弱いよね。アッハッハ」とか陰ですすり笑ってるんだ。あいつら。もう許せねぇ。俺の変態っぷりとロリータっぷりならいくらでも笑ってくれていい。死ぬほど笑って死ねばいい。だが俺の誇りプライドを笑うやつは絶対ぇ許せねぇ。

冷蔵庫に大量の公共料金が陳列してある。

畜生。マジでどこのコンビニも腐ってやがる。なんて値の張り方だ。これでは俺に牛乳を買うな、オメェみたいな尻の青いガキはエロ本でも立ち読みしてオナニーしたくなったらさっさと帰りやがれって言ってるみたいじゃないか。許せない。俺はエロ本でオナニーしたいなんて思わない。

こうも関西一の紳士と轟かせる俺の名を汚されたなら許せない。勝ってやるよ。世のコンビニよ、俺をナメるんじゃねぇぞ。俺は金は少なくても牛乳のひとつくらいは朝飯前で買える。昼飯前で買えるぞ。どれくらい余裕かって言うと、エロ本を買う時わざわざ裏むきにするんじゃなくて、表紙見せたまま堂々と買えるくらい余裕だぞ。どうだ、思い知ったか。

しかし・・・・肝心の牛乳がありやしねぇ。畜生。このセブンイエブンは牛乳も置いてないのか。なんだアレか。オマエ、その・・・俺をなにか勘違いしてるのか。こんな牛乳売ってないなイベント発生させやがって。俺を初めてのお遣いの幼稚園児と勘違いしてるのか。俺は18才だ。俺は誇り高きフリータだこの野郎。

なんとか小さいパックの牛乳を発見。

しかし許せないね。こんな小さなサイズで100円ってのが。ダイエーだったら絶対88円で売ってるぞ。絶対もっと安いはずだ、しかもこんなお昼休みのOLが飲みそうな小さなパック、なんでこんなベットタウンのど真ん中で叩き売りてるんだ。ああもうありえない、コレを買って俺はこの店を立ち去ろう。これしかないんだったら仕方ねぇや。

ローソンとは違いあきらかにやる気のない大学生。金髪のやる気なくバーコードを手に取る大学生。

「ピ・・・・105円です」

あん?きこえねぇぞゴラァ!って言う根性のないヒロさん。むしろ牛乳を買わせてくれたそれだけで嬉しくって12回くらい土下座してしまうような小心者のヒロさんにはこんな暴言はけません。いいよいいよ。もう全然いい。

牛乳を購入、袋を持って家に走るヒロさん。いやぁ、こうしてる間にもミンチをこねて愛情たっぷりのハンバーグを作っているマミーが、俺の牛乳を今か今かと待ってるに違いない。コレが無いと最高のディナーは完成しないのである。全ては俺にかかってる。俺一人でハンバーグの質が決定するのだ。そう思っただけで俺の心はスリルとショックとファンタジー。

その姿はまるでは野党に追われたマスク・オブ・ゾロのような勇姿。牛乳を片手に全速力で走る俺。物凄い勢いででカロリーを消費しまくる俺。いやぁこんなかっこいい姿読者にもみせてあげたい。こんなヒロさんの姿を見たら、きっとナイーブな心を持った純真な婦女なんかは絶対に俺をフィアンセにしたがるね。ヒロさんの家でハンバーグを作ってみたいとそう心から想うだろうね。

100円のミルクを左手に、右手でドアを開けて「ただいま」と叫ぶ。吠える。

俺は任務を遂行しきった。もう「隣の晩御飯」が来るような時間ではないが、これで我が家においしいハンバーグができあがる。山崎まさよしなんかがしんみりとテーマソングなんか歌ってくれるような温かい家庭の姿がここに生まれるんです。もう夜中の11時ですが。

そのときヒロの顔は満面の笑みと達成感で満ち溢れていた。青春だ。俺は今猛烈に青春しているのだと。

この日のトキメキは間違いなく一生もの、いや間違いなく子孫繁栄ものだね。夜中の5時というのもあって俺はそろそろ眠いのでここで日記を終わりとしたい。

お粗末。

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