バレンタインデー

2003/02/14

今日はバレンタインデーです。

バレンタインデーといえばチョコレート会社が大儲けし、ケーキ屋とか薬屋がチョコレート屋でもないのに突然チョコレートを売り始めるまさにチョコレートな記念日。今日はなんてハッピーな日だろう。

俺もやっぱりチョコレートな記念日にはね、チョコの一つも食べとかないといけないと思うんですよ。節分に年の分だけ豆食ったら健康になれるように、チョコレートの日にはショコラな気分でチョコレートを食べといた方が体にもいいと思うんですよ。

チョコの日にはチョコを。そういった理由で、己の健康を守るべくチョコを求めるヒロさんの果て無き旅は始まったんです。

まず朝。目が覚めると目の前には大量のチョコレートが並んでた。大量の量産チョコがテーブルの上にモリモリと。

己の健康を守るべくヒロさんはそのチョコレートを一つ手にとる。「ゴルァ!」おっと横から妹出現。テメェなに人様のチョコ食ってんだバカ野郎という目つきで見つめてくるんです。まったく兄にむかって無礼すぎる。

俺はね、けっしてチョコレートが食べたいわけじゃないんですよ。ただ、チョコレートを食べるという儀式的な日にチョコレートの一つくらい食わないと健康に害するとそう思っていやでも食べてやろうかと思ってるんですよ。

仕方ないから食ってやると言ってるのに、この妹俺に一つもチョコをよこさねぇ。なんだ、俺の健康よりも人の健康の方を気にするか。家の外の男のほうが気になるか。そうか。

小さい時は「はい兄ちゃん♪」とか素直に言うこと聞いてチョコレートとかも自作で前日からがんばって仕込んでたというのに、世の中ってのはなんてはかないもの。もう兄にやるチョコなどねぇとそう言いたいか。

いいよ。兄ちゃんはね。あんたみたいな身内の女に貰わなくても、俺の健康を思う何万の女性が玄関を出た瞬間から待ち構えてるわけなんです。マイナスイオンたっぷりの癒し系チョコが兄ちゃんをまちかまえてる。

だから妹よ。もうオマエのチョコなど俺には必要ない。それをわかって俺にチョコをくれなくなった、それくらい兄だからわかってるぜ。

朝から健康の危機を感じた俺は、とりあえずバイト先に向かった。

チョコの日にチョコを食わない。これほど身の危機があっていいだろうか。やっぱり男の一年の厄除けはこの日にあると思うんだよ。断言するね。うん

ちなみに俺のバイト先のミステァードーナッツってのは女ばかりだ。一つ間違えれば女子大に男が侵入してるんじゃないかと言わんばかりに女ばかり。女子大生のお姉さんがいっぱいいるんですよ。

読者の男どもよ。うらやましいだろ。もうこんなに恵まれた状況があっていいだろうか。こんなさえない男が果たしてこんなに素晴らしい環境に恵まれていいのだろうか。

もうチョコは貰ったの同然だね。己の健康は危機を逃れた。最低一年は死なないよ俺は。

「お疲れ様でーす」

いつものテンションで事務所に入る。今日だけ気取らなくてもいいんだよ。男ってのは気取らない方がいいってこと。

今日はバレンタインデー。世の中の男が自分の健康を案じてチョコをむさぼる気分はわかるんですけどね、だからって今日だけいい男気取る必要なんか無いって思うのよ俺は。普段どおりの俺で、普段どおりにチョコを貰う。普段どおりにな

中に入ると、「みなさんバレンタインデーチョコです。食べてください」って書置きといっしょにチョコの箱を発見。いやー天使みたいな女性もいるもんだ。

でもね、一つだけ大きな失敗をしてる。健康を維持するためのチョコの必須条件ってのはね、手作りじゃないといけないのですよ。チョコレート会社を儲けさせるようなチョコはダメです。邪道です。バレンタインデーの魂の道に反してますね。

どれだけ形がわるかろうと、どれだけ味がわるかろうと、手作りであることによって不老不死くらいの健康パワーを帯びるわけですよ。料理ができなければできないほどモテるのはこのバレンタインデーの日だけだと俺は思う。

「男は腹で使え」と昔の偉い人は言いました。まさにその通り。手作りのクッキーでもビスケットでも飴でもガムでもなんでもやったらですね、男ってのは絶対惚れちゃうんですよ。手作りなんか貰って嬉しくない男はいない。手作りだとチョコレート嫌いな男でも全部残さず袋までなめれちゃうんです。

手作りって響きに常日頃からハァハァ言ってる。ちなみに「けづくろい」を間違って「てづくり」と読んでしまうくらいに硬派な手作りフェチを持つヒロさんなんかになりますとね、手作りチョコを食べた瞬間体に電撃が走るわけですよ。

例えるなら「セックスして最後にイク瞬間」もっと明確に語れば「1時間くらい焦らした後にオナニーで逝ったあの瞬間」なんですよ。そう、ヒロさんは手作りでイクことができるんですよ。もうなんて変態なんだろうか。

ちなみに俺の上を行く手作りフェチのK先輩は、手作りのチョコレートだけで3日は不眠不休でいられると言ってた。そうまさに手作りとはスタミナドリンクの効能も果たしつつ、癒し効果ももたらす万能薬。これを貰って惚れない男がいたら間違いなくそいつはゲイだ。断言しよう。

まぁそんなわけで、文句言いながらもそのチョコレートを食べようと思ったんですよ。まぁ手作りじゃないけど、義理を飛び越えた社交辞令なチョコだけど、まぁ一日くらいは健康を守れるかなとか思いながらチョコを食べてやろうと思ったわけです。

しかし、箱の中を見たら。


・・・・・終了しますた。


誰だ!誰だこんな非道なことをする奴は!見つけ次第ぶん殴って大阪の海に沈めてやるぞゴラァ!

おっといけない。関西の紳士で一名高いヒロさんがその程度で怒っちゃいけない。たかがチョコじゃないか。アハハハハー

しかもそこらへんで500円か5000円かそれくらいで適当に売ってそうなまさに社交辞令なチョコじゃないか。俺って人間はこの程度のチョコレートにしゃぶりつくのか?そんなに俺は低かったか?

こんなにプライド高いヒロさんがそもそもデパートの地下で売ってそうな安っぽいチョコに貪り付くわけないじゃない。

そうそう、こんなとこでチョコを食えなくっても、事務所を出れば俺を愛して病まない全国のヒロファンが俺にチョコを貰ってくれとひしめき合ってる。たかが一つのチョコで何をごたごた言う必要があるのだ。

制服に着替えて、颯爽とレジに向かう。こんな日にドーナツ食うやつなんて相当の淋男だな、とか思いながらいつものようにバイトバイトバーイトしてたんです。

先輩が突然出現。女子大生な先輩がね。ダーリンラブとか自分で連呼しまくってる先輩があいかわらず俺みたいな非モテをからかうわけなんですよ。

「あ、ヒロくん今日何個チョコもらった?・・あ!聞いちゃいけなかったねー!ゴメンゴメンあはは〜♪」

ぐ・・・・テメェ。その面グシャグシャにして、今度こそ神戸の海に沈めてやるぞ。ゴラァ!!

おっといけない。もうね、こうやって女性ファンに好まれると同時にね、それを嫌がる人も同じだけ出てくるわけですよ。人気者にはこういったイベントはつきもの。何これくらいのことで熱を上げてるんだ俺は。アッハッハ

その名は関西はおろか、近年では全国とも言われてるくらいにその紳士っぷりを轟かせてるこの俺がこの程度の次元の低い会話に熱をあげるだと。ありえないね。紳士ってのはつねに落ち着きをもってる生き物なんですよ。ダーリンラブな女に心揺らされてたまるか。


バイトが終わり帰り道。今日は毛染め液を買うために近くの安い薬局に行ったから、いつもとは違うルートで帰ったんですよ。

もちろん愛車「マグナム4号」に乗って颯爽と歩道を駆け抜けるんです。マグナム4号は車道を走らない。いつ野党につけまわされて傷の一つ頂くかわからない。そんな危険な場所に俺の愛車を走らせない。

近くのダイエぇみたいな所の前で、可愛い女の子がビラくばりをしてました。

いやもうマジで可愛い。キャワイイね。癒されるってこれは、ずっと見てたら視力が上がるんじゃないかってくらいに癒し系なのね彼女は。

こんな女の子が寒い空の下、一人でビラ配ってるなんて本当に不憫で不憫でたまらないんです。愛車マグナム4号もかわいいけど、こういう痛いげな女の子はもっと目が離せない。いつ彼女も野党に襲われるかわからない。

むしろ野党に襲われて俺が助けるというイベントもありなんだが、むしろ野党に襲われて俺がやられるという展開の方が9.8割の確立で決定してしまうのでありえない。野党が出てくるなら中2か中3のガキで、ナイフとか持ってないと自分を守れないような糞ガキがいいね。そうであって欲しいよ。

しかし彼女はまたかなりのロリータフェイスな訳ですよ。したがってよってくる野党は変態おじさんって限定されてくる。俺みたな変態が野党だと思うと逆に怖くて怖くて。俺みたいな変態な野党だといつ最終手段で珍物露出という手段にでるかわかったもんじゃない。

しばらく運転しながら彼女を直視してたら、あることに気がついたんです。

彼女が配ってるのはまさしくチョコでした。

俺の視力も落ちたもんだ。HP作ってから相当視力が落ちた。遠い物が二重に見えるという感覚を最近肌で感じ始めて目の悪い人の辛さを痛感している。

っといっても俺の視力は未だ1.2なんだが、彼女のチョコをこんなギリなタイミングで発見してしまうなんてなんて俺はバカなのだ。もっと早く気がついておくべきだった。

もっと早く気がついていれば、自転車を降りて「歩道は自転車を走らせません、ボクは良い子ですから」とか言わんばかりの勢いで、歩道を歩いてた。我が物顔で堂々と。

そしてチョコを配っている癒し系レディーから堂々とチョコを受け取った。愛のチョコを。俺の一年の健康とご利益を支えるべく命のチョコを。

自転車に乗ってる俺は当然チョコなど貰えるわけも無い。癒し系レディの横を素通り。ロリータフェイスを素通り。切ないです。やるせないです。

おっと俺よ!なんでこの程度のことで悲しみに浸ってるんだ。そんなもんここを抜けて残り5分もすれば、俺の熱狂的ファンの集団が道を通せんと言わんばかりに広がって俺にチョコレートを渡してくる。

俺みたいな人気者がね、たかがそこらへんのロリータフェイスのねぇちゃんが配ってるチョコレート一つに感動を覚えるわけが無い。俺を誰だと思ってる。関西一の紳士のヒロさんだぞ。現代のOLの人気者。女子校生のアンパンマンと言われるそのヒーローっぷりの俺に限ってチョコを食えなくて孤独で健康を害するなんてありえない。ヒロさんがチョコを食べるのは世の中の定理なわけですよ。

チョコよ待ってろ!待ってろよチョコ!!

・・・・。

現在2月15日。2時30分。

日本からバレンタインデーなんて文化なんてなくなればいい。

そう切望するヒロでした。


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