チョコレートがなんだ

2003/02/12

なんかみんな騒ぎすぎ。みんなチョコチョコチョコチョコ騒ぎすぎなんだよ。

なんでみんなそんなにチョコチョコチョコってチョコボール向井みたいに興奮して喘いでるの。俺にはわからないね。女にチョコレートなんか貰って何が嬉しいのですか?ほんとみんな何かんがえてるんだかわかんないよね。

痛い系サイトの男どもはみんな自分の印象アップにエロを控えて紳士っぽさをアピールして、その挙句チョコレートなんかいらないなんて強がって。

無駄ね無駄。もうね、俺たち痛い系サイトはモテないのが運命なわけですよ。どんだけ紳士っぽさをアピっても無駄無駄。気合い系サイトだったらわかるけど、痛い系はモテないのが宿命なのは言っちゃいけない暗黙の了解でもあるわけ。

何度も何度も日記で「俺は関西一の紳士だ!」って吠えてるヒロさんが無理なんですよ。ありえないね。なんというか、紳士は甘い物など要らない。


小学生の時のバレンタインデーだったかな。

小学校4年だ。好きな男の人にチョコレートを渡すというイベントに当時まだまだピュアな女子たちが騒いでたんです。

チョコを渡すということが好きな人へ愛を伝えるという意味ではなく、ちょっと大人っぽいことをやってみたいという当時のしりの青い女たちのおませな考えだった。チョコを渡す、それだけで自分は周りよりも大人なことをやったのだと誇れたんだろうね。

本当に女ってのはおませさんだ。

ちなみに男。チョコを渡すというイベントははっきり言って違う世界の物だと思っていた。ドラマとかマンガくらいだよ今時こんなことするやつ!とか思いまくってた。

第一そんな粋なことする女の子なんてまず身の回りにいるはずがない。いても俺たちじゃないだろう。そう、俺たち小学生男どもはバレンタインデーを完全に現実のものと見えてなかった。

男ってのは純粋なバカだったんです。

「今年もいつものように、チョコレート屋が繁盛する時期が来たな。」当時の俺は毎度のようにそんなこと思ってました。

なんだろう、二人の妹と母からもらう社交辞令名チョコレートを今年もかじる。節分に豆を食うようにチョコレートを。一種の儀式だと俺は受け止めてた。バレンタインデーを完全に甘い物を食ってるだけの日と決め付けていた。

そんなある日のことだった。


バレンタインデー当日。勉学にいつもにように勤しむ超エリートなヒロさんは、ランドセルに教科書を詰めて、何事も無く帰ろうとしていた。

「僕今日は塾ですから」って言いそうな勢いでビュンビュン光速で競歩してるんです。いつものようにさっさと家に帰ってしまいたかった。

当時小4なのに、ドラクエ5をマジになってハマっていた。おいおい発売して何年たつんだよってツッコミもさることながら、ゲームがあまり得意でない俺はレベル上げだけが大好きでたまらなかった。ソフトをなかなかかってもらえない俺の唯一の楽しみ方なんだろうか。

今日もいつものようにドラクエ5をやって風呂入ってグーグー寝る。でもって普通に次の日を迎えるんだ。

重たそうなランドセルを背負いつつ校門を差し掛かったそのときだった。

「ヒロ君!今から帰るの?」

女の声に気がついて右を見ると、そこには同じクラスの隣に座っている瑞枝がいた。

瑞枝はクラスでは元気のいい誰とでも仲のいいタイプのノリのいい女の子。顔はそこそこなのだが、恋愛とかに無縁そうなそんな感じの女の子。バレンタインデーは勿論お父さんにプレゼントという感じの女の子である。

そんな瑞枝が何故か俺に声をかけている。いや、俺だけに声をかけている。こんな不思議なこともあるもんだ。

「え、うんまぁ。学校に残ってても面白く無いやん。」

正直この当時から俺は女と話すのに抗体が無い。当時はお世辞かどうかわからないが、「女の子みたい」といわれるくらい童顔で大人しい性格。ひとつまちがえたら男のくせにおしとやかという大変な事態だった。

そんな俺が女と話す?ありえない。

「あのなぁー。ちょっと用があるねんよぉ。だからぁ・・・」

瑞枝はなんかモジモジしながら言ってくる。勿論、当時の男はさっきも言ったとおりバカなやつばっかり。チョコレート貰う日にチョコレートを渡したいって普通に言おうとしてるただそれだけのことが、俺にはわからなかった。

「何?今でいいやろー」

今考えたら俺はとんでもないことを言ってる。校門でチョコ渡す女がどこにいるというのだ。さすが小4の俺。

なんだろうか、俺はバレンタインデーを完全に家族の女から貰うものだと思い込んでたのかもしれない。だから、家族以外にチョコレートを貰うそれが俺の感覚にはない。カルチャーショックだ。

「ヒロくんってさーいっつもそうやって早く帰ってるよね。クラスで一番先に教室出てるよね。男の子って家で何して遊んでるのかわかんない」

「そんなもん毎日マッスルランキング(筋肉番付)に出るために日夜腕立て伏せの修行の日々だ」なんてそんな嘘八百ぬかせない。だからといってドラクエ5で毎日マドハンド相手に経験値稼いでるとも言えない。

この時期毎日遊んでた友達は、小体連のサッカーみたいなのに参加してたせいで全然俺と遊んでくれなかった。だから俺もドラクエにはまるのは無理も無い。誰も俺を責めることなどできないはず。

マドハンド相手に余り尽くした暇を徹底的に注ぐ。それだけで十分生きがいな毎日。腐ってるなんて言うな。

「女の子の方が気になるって!」

話題をそらした。とても小4とは思えない素晴らしい完成された話術。すごいね俺

「なんだろう。ヒロ君は?」

あっさり撃破。まぁその場はなんとかごまかす。なんかね、当時の女の子ってのは男の子に興味深々なフリをしてみんなにそのすごさをアピってたんだ。少しでも男と接点がある自分をみせたかった。まぁしいて言えばおませちゃん。

瑞枝とは同じ帰り道だ。いずれ阪神大震災で引っ越して家は離れることになるのだが、時間帯が何かでちょうどよくヒットして、こうやって一緒に帰らされたことは何度かある。女は嫌いではない。しかし話せない。どれだけこれが気まずいことか。

こういう二人だけのシーンってのを見ただけで他の小学生はラブラブーってからかってくる。そう、2人歩いてるだけで冷やかしの対象になるのだ当時の小学生は。ついこのまえまで手つないで運動会の行進とかしてたやつらがありえない。

一度俺と瑞枝が一緒に帰っている様子を目撃されて、近くの建物から水風船を投げられたこともあった。まぁそんなことはどうでもいい。別に付き合ってるわけでもない。ただの友達と帰ってて冷やかされても「ん?どうした?」って感じだから全然苦ではなかった。

正直女の友達と一緒に帰るのが普通な女の子。そんな女の子が何故今日は俺とかえるつもりでいるんだ?しかも今日は偶然ではない。

「今日さ、ダイエーの前の広場に来てやぁ。夕方4時くらいかな。」

意外とあっさりと最後は言った。一緒に帰るのではなく待ち合わせ。ほほう、生まれてこのかた男と女を意識したことなどなかった。小学生に性別なんかない。全員同じガキだ。

小4。そんな俺に女を意識する能力なんか備わっているのだろうか?男は生まれてから男。やっぱりここまでされると、無理矢理でも呼び覚まされる。男と女を意識する感情が。

それを言われた瞬間に一瞬にして俺は察した。ああなるほど。今年は家族以外からもチョコがもらえるのだなと。

家に帰って速攻スーファミに電源を入れる俺だったが、今日はそんなことをしなかった。だからといって何か違うことをするかといえばそうでもない。オシャレなんかしない年中体操服な小学生に何をしろと。

寝癖もなおさない顔も洗わない。それでも関係ない。オシャレがなんだ。そんなもん小学生に必要など無い。

4時、ギリギリに出て遅刻するのが習慣な俺。当然このときもギリギリに出た。ってか4時過ぎてた確実に。

家を出てダッシュする俺。なんだろうかこの胸のトキメキは。俺もついに、女からチョコを貰えるのだろうか。なんだかんだ言ってもチョコレートもらえるなんて嬉しい。

息をきらせてダイエー前の広場に到着。

瑞枝は、もういた。

一人じゃない。周りに3人くらい女の友達もいる。恥ずかしいのか?一人でチョコレートなんか渡すほど度胸は無いと。

「あ、ひろ君おそいわー」

え、何?このデートの定番みたいなセリフは。男が遅刻して女が「遅いわー」なんていうこのありきたりすぎるシチュエーションは。なんかやらしいぞ。

未だかつて瑞枝をここまで意識した日があっただろうか。未だかつて女を意識したことがああっただろうか。

セックスなんて言葉は知らない。悟空とチチの間に悟飯が生まれたのは純粋な愛があってこそのものだと思っていた。もっとマニアックに言えば、主人公(ドラクエ5)とビアンカの間に生まれたのはやっぱり純愛あってこその奇跡だと思ってた。汚れなんてものは無い。

セックスを知らない純愛から見る女の像。なんだろうか、背景には少女漫画と言わんばかりの薔薇しか見えない。星しか見えない。キラキラのスクリーントーンしか見えない。

「はい、チョコレート!」

意外とスパッと渡した。大した根性だ。「ありがとう・・・」俺もなんと反応していいのかわからない。チョコレートなんか家族以外に貰う物だと。ただ、それだけが俺には凄すぎて・・・

チョコレートを右手でサラっと渡す。

・・・ん?

チョコレートをサラッと右手で。ごく普通といわんばかりに。さらっと右手で。

・・・ん?

左手は・・・・・・・ダイエーの袋。

!?マジか。ええダイエーで買いましたよって言わんばかりにダイエーの袋。ちょっとまってくれよ。いくらなんでもチョコレートを当日にチョイスするなんてありえないね。いくらなんでもここだけは譲れない。いくら小学生だからって買った場所わかるようなチョコレート渡すなんて信じられない。

チョコレートもらえるだけありがたいけど、これだけはやっぱり譲れない。そういうファンタジーをぶち壊すような真似はちょっとやりすぎ。

っとまあそんなことを適当に考えてた俺に。ちょっと苦笑いぎみの俺に次に来たのは。

「はい、ヒロくんチョコレート!」

おいおい!ついてきた女の子まで俺にチョコレート渡すのカヨ。あんた瑞枝と俺との大切なイベントをぶち壊す気なのか?

それとも俺のファンクラブとでも言いたいのか?お前らは。いっとくけど俺は女は一人しか選ばない。複数と恋愛同時進行なんてありえない。やっぱり恋愛ではそういうの基本だと思うよ。

「はい。あたしのも貰ってよ」

おいおいおいおい!勘弁してくれよ困っちゃうなぁ〜!アハハ。なんだろうか。ここまでチョコレート貰ったら一人一人への想いが分散されるじゃないか。いいのかそんなに俺にチョコレートを渡して。

俺は瑞枝一人からごく純粋にチョコレートを貰おうとそれだけを思ってドラクエもしないでやってきたんだ。なんで部外者がそうやって口をはさむのかな。

まぁいい。今回は受け取るよ。今回だけだぞ。


「はいマサ君。」


登場したのはマサ君10歳。うちのクラスにいるモテなさそうな雰囲気カモし出てる率ナンバーワンのナイスガイ。人は彼をこう呼ぶ。「チンコ愛好家」と・・・幼少時代はチンコチンコと連呼することでそれはそれは有名な近所のバカガキだった。

そんな彼が何故俺の横でチョコレートを貰っているのだ?こんなにもナイスガイな彼の何処にチョコレートを貰える要因があるというのだ?不可能を可能にするとはまさにこれのことを言うに違いない。

まずチョコレートは好きな人に渡すというのが鉄則。チンコ愛好家と呼ばれた彼はチョコレートなど当然もらえるはずが無い。しかし彼は何かとてつもない作戦で不可能を可能にした。エロ本とかの広告ページに載ってる「これで私はモテモテになりました」とか、「この商品で俺は成金です」とか書いてるいかにもサギ丸出しなあの怪しげな宝石を身に着けたに違いない。きっとそれしかない。

「この薬で俺のチンポは2センチ伸びました」って書いてる広告ばっかり読んでる人にはわからないだろうが、こういったサギな宝石は極めて入手しにくいらしく、2万円とかバカみたいな価格で売られている。ほんとうにバカな話だ。

彼はそこまでしてチョコを貰いたかったのだろうか?小学生でありながら2万円の大金をはたくほど女にうえていたのだろうか?500円くらいのチョコレートのためにバカな金をはたいたバカなのだろうか?


「はいマサ君」


どんどん配られるチョコレート。ああ。だんだん俺のチョコレートの価値が失われていく。希少価値の高い女から貰った俺のチョコレートが、チンコ愛好家でももらえるチョコレートへと物価が落ちていく。泥沼だ。

そしてついに恐れていたことが起きた。


瑞枝「はい。マサ君。」

はい。マサ君。はい。マサ君。はい。マサ君。はい。マサ君。はい。マサ君。はい。マサ君。はい。マサ君。

俺の心で何度エコーがかかっただろうか。マサ君が貰ったものとまさに同じ500円のチョコレートを俺は持っている。

それはもうたとえ小学生でも、表現の仕方のない怒涛の絶望感と、ディープな劣等感に包まれた。この悲しみをどう表現しようか。

その後彼女らはこう言った。


「ホワイトデー待ってるからね。」


モテない男に光を射し、女と関われないという恵まれない弱な部分をうまく利用した女たちの女たちによる女たちの為のパラダイスな作戦。男の弱いところにつけこむやってはいけない非道なる行為。

隣にいたマサ君は喜んでお返しした。しかし俺は返さなかった。いや、返したとしても多分駄菓子の10円のソーダ飴くらいだろう。

あの非道女たちに返す飴などないと?いや、そういうわけではない。そこはまだ未熟な小学生、日がたつにつれお返しなんてどうでもよくなってきた。むこうはどう思ってるかしらないが、みんなに配ってるおしゃれ感覚でリーズナブルなチョコに返事など要らないと勝手に気が変わってきた。飴は高くて買う気にもならない。

今思うと、当時から女というのは悪徳な道を覚え、男を操る術というものを何かの感のようなもので持ち合わせていたのだなと思った。それは環境が作り上げる物ではない。小学生というピュアな心でもこんな非道なことができるのだ、これは生まれもっての本能と呼ばずにしてなんと呼ぼうか!?

ちなみにマサ君のチンコチンコと連呼する癖は、親にチンコと言っても注意されなかったことからチンコと叫んでも大丈夫と思ったのであろう、まさに環境と好奇心から生まれた毒。彼はまさにチンコと言うように環境に作られた。

しかし女は生まれ持って男を操る本能を持っている。本当に怖い。

どんだけ純な女でも、どんだけ無垢な女でも、そういう本能は少しばかりはある。それをふまえてこれからの人生をあるこう。


ちなみに今年俺はチョコレートを貰う相手はいない。そういった点で確かに安全と言えよう。

チョコレートを貰うやつはきっとダマされるやつなんだ。俺はそう思わないと、今年もバレンタインデーを抜け切れそうに無い。

PS.ついでに言うと、俺とマサ君も合わせて合計5人のかわいそうな男たちが女たちの罠にかかってました。

さらにPS.読者さまから「女の子は純粋な気持ちでチョコあげる人だっている」っていう人がいました。うむ、どうやら文章を読む限り、完全に俺はチョコを否定してますね。俺はチョコレートを貰えない理由をつくって遊んでみただけなので、実際はそんな風に思ってません。チョコレート?そんなもん、欲しいに決まってる(涙)


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