剣道をやめた理由

2003/01/27

俺は中学校時代は剣道部でした。以前の日記でも一瞬だけ剣道部って名前を出したと思うんですけど、それについて詳しく語ったことはなかったはずですよね。

まず俺が剣道に入った理由は特にありません。なんで入ったのか自分でも不明です。ただ、当時剣道界は「るろうに剣心」というマンガが売れてたせいでもの凄く流行ってました。その年の入部者は物凄かったんですよ。

みんなそろって「天翔る竜の閃き」とかいう理解不明な京大とかの入試に出そうなほど難しい言葉の技とか使って剣の心をわかったつもりに浸ってたんですね。俺は漫画とかそんなに読まないから未だに理解不能なんですが、とりあえずその剣心って人が使ってた最強を誇る技っぽいのはよくわかりました。

当時うちの剣道部は、前の顧問が辞めて物凄いところまで弱くなっていて、スポーツマンな爽やか中学生もいれば、ナウでヤングなマッチョ野郎なんかもいたりして、ちょっと視点を変えればマニアックな奴もわんさかいてものすごいラインナップを誇る変わり者部として通ってました。

総理大臣とかに表彰状とか貰えそうなくらい真面目で紳士でありえないくらい正常ともいえる俺ですら変質あつかい。まったくいい迷惑ですよ。ビックな剣道部はある意味で名前を校内に轟かせていました。

しかしここでの3年間は俺にとって監獄にいた気分でした。

俺は運動は苦手です。高校はちなみに音楽にをやってたんですが、その理由はもちろん中学時代の運動への挫折が原因でした。剣道だって最初はそれは頑張りましたよ。しかし当時根性無しな俺はすぐに飽きちゃったんです。練習しない→下手になる→面白くない→練習しない→下手になる→面白くない。

毎日こんな悪循環が続いて最悪な中学生活でした。しかしサボらせてくれないその中学校の部活制度の硬さで、監獄同様の毎日が難な生活。サボリ自体も俺は大ッ嫌いだったんであんまりする気にもなれなくって。

根性無しだからいつになっても言えなかったんです。「辞めたい」って。先生は「毎日ちゃんと練習に来てる人は、絶対に試合に出してあげます」っていいながらいっつも俺だけベンチだったんです。悪循環はさらに続きました。

3年の初めまで俺は部活に通いました。なんというか、友達とじゃれあってるそれだけがある意味心の支えだったんでしょうね。友達なんかいなかったら拒否ってたかもしれない。部活よりも部活帰りの方が楽しかった。

ペットボトルにお茶とみせかけてビールとかブランデーとか入れて持ってきてたわけですよみんな。でもってみんな顔赤くして帰るんです。「その麦茶えらい泡立ってるなぁー」とかいいながらグビグビ飲んでるんですよ。もうバカみたいにガバガバ。

楽しかったこの瞬間。俺はこの瞬間だけが学校生活の楽しみでした。


しかし3年の真ん中にして事件が起きたんです。部活引退を控えた2ヶ月前。俺はちょっと興味をひく友達がいました。

その友達はクラスでも部活でも割と嫌われ役に入ってました。どんな団体にも出てくるんですよ。嫌われ者が。何かと人間って自分が安心するために人をバカにして生きるんですよね。不思議ですよ。

そいつは嫌われ者集団の中でも割と下っ端役。自分から話すよりも人の話を聞いて笑ってるような役だったんです。名前は純一って言ったかな。

純一は人と話すことが怖いと言ってました。自分は人に嫌われている。人と話せばその人が自分と関わってることによってそいつも嫌われる。だから自分は孤独でいいんだと、中学校という集団行動の生み出した汚れの部分って奴を3年間味わい続ける酷すぎる男でした。

純一と俺は同じ部活だったんですが喋る機会なんて全くなくて、偶然3年になってから同じクラスで席が前後ろの関係になっることによって初めて話をしました。間が完璧にとれた彼のボケはツッコミ方をも驚かす素晴らしいものでした。

純一は俺と話してる間ずっと心配してたんです。俺が純一と関わってることによって、俺がみんなから敬遠されてしまうのではないか。俺も嫌われ者になるんじゃないか?って。

人を想う心は人一倍あった。だからこそこうやって嫌われるような人間になってしまったのでしょうか。俺には理解できませんでした、彼が嫌われる理由が。

うちの学校での嫌われ者ってのはそれはそれは問題児でした。彫刻刀をもって人に向かって「裏刃だから安心しな!」って言いながら襲い掛かったバカ。彫刻刀に裏も表もねぇよ!ってツッコミなど必要ない。その日以来嫌われ者。

ほかには自分の鼻くそを・・・うんこれ以上はやめておこう。

だからこそ彼自身も彼らとは心から語り合うこともできず、自分を打ち明ける相手なんか当然いなくって寂しい立場だったんです。俺は彼に惹かれ、ドンドン自分のことを語っていきました。純一は最初は戸惑ってたんですが、いつのまにか俺とはすっかり打ち解けあう仲になってました。

ある日俺は思いました。彼を部活帰りに友達のグループに入れてやったら絶対にすぐ仲良くなれる。純一の本当の姿を見てもらって、孤独な彼に沢山の友達を作っていい感じに部活引退しようって。

その日俺は純一に一人で帰るのではなく俺と一緒に帰ろうって言いました。もちろん彼も薄々気がついてたようですが、決心ができたのか俺と帰ると言ってくれました。嫌われ者って奴らはみんな薄情な奴らばかりで、学校では仲よさそうでもプライベートには触れない。一緒に帰るなんてもってのほかって奴ら。

当然純一は友達と一緒にワーワー言いながら帰るのは初めてです。緊張して、早めに剣道の袴姿から制服に着替えた彼は少し落ち着かない様子で下をうつむいて、体育館の隅で待ってました。

俺と着替えた部員たちは、着替えを終えて、女体についてフルに語り合って体育館入り口の靴置き場で靴を履いてました。丁度その時はいっつもシルエットがかかってて見れない女性のま○この形についてどんな形だ!どんな形なんだ!って意味ありげに語り合ってたんですよ。

純一を無理矢理連れてきて一緒に靴を履きました。次第にみんな純一の存在に気がついてきました。もちろんそんなもんいい雰囲気なんてものじゃありません。かなり張り詰めています。

嫌われ者の人間が目の前にいるんです。集団行動の生んだ汚れという奴がすぐ目の前にいるんです。みんなもちろん汚らしいものを見るようにマジマジと彼を見ました。純一はどんどん小さくなって、今にも逃げ出したいといわんばかりの顔です。

しかしそんな雰囲気も1分も待たずしてなくなった。純一はまさにそのボケっぷりをフルに発揮して純一一色で学校の門をでました。

その日からは毎日純一有りで下校してました。もう完全に俺たちの友達でした。「純一がまさかこんな奴とは思わなかった!」「純一って面白いやつやったんやな!」っとか言ってみんなで遊びに行ったりするような仲になって。

そうなるとクラスでも彼は一変した。授業が終わっては休み時間ずっと寝ていたあの生活はもう目にも浮かびません。休み時間は常にたわいも無い話でブリブリ盛り上がってました。

彼は俺の剣道と同じく、友達ができない→嫌われる→話ができない→友達ができない→嫌われる→話ができない。この悪循環をひたすらに続けていただけたった。一度この循環を変えると、人と話す→好意が生まれる→友達ができる→人と話す→好意が生まれる→友達ができる・・・っといった具合にどんどん薔薇色の人生へと姿を変えていく。

2週間もすれば、彼は完全に変わっていました。もうあの時の自分を抑えるような下向きかげんな表情など見せることはありません。

しかし・・・・・


つづく。


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