牛丼屋で見たものは?

2003/01/18


俺は牛丼大好きだ。牛丼フェチだ。昔からこのHP見てる人ならこの想いが存分に伝わっていると思うが、俺はもう牛丼が大大大好き。

もちろん今日もいつものようにそこらの凡人と同じように牛丼を楽しみ牛を堪能するために牛丼屋に入った。最近牛を口にする機会がめっきり減った俺だったので久方の牛には楽しみでならない。もし回りに女性がいなかったら踊り狂って喜んでいるだろう。でも今日は日曜日。紳士で生真面目そうな男で通ってる俺はそんな変なことしない。

牛丼屋に入る。もうなんというか、「実は俺牛丼通やねん」とかスゲー自慢げにしてる奴は癒しを求めるかのように「牛丼ツユダク」とか知り尽くしたような専門用語を使って食らう。本当の通はもうツユダクなんていうコレステロールダクダクに溜まるような牛を楽しまないことなど知ったかぶりの通たちはわかってねぇ。今は牛皿で分けて牛丼を楽しむ奴もいるくらいさっぱりとした牛をたのしむんだよ。

まぁそんなウンチクもここらへんにして、あいかわらず癒しを求める奴はツユダクを、スリルを求める奴は七味唐辛子をたっぷり加えて牛を純粋に楽しんでいる。牛丼屋では当然ともいえる光景だが、本日の牛丼屋ではあきらかに何かが違う。違いまくってる。

何だこの臭さは!

食い物屋にして食い物屋であらずなこの鼻を刺す香りはなんだ。雑巾がくさったのかもしくわ店そのものが腐ったのか知らないがこんな香りと共に俺は牛を楽しまないといけないのか?朝という充実感を得るために早朝早くから牛丼屋に牛を食らいに来たのに早起き損してしまったじゃねぇか。俺はこんな香りとともに牛を楽しみたくねぇ

しかし一度店に入ったのだ。なんかフレッシュそうな店員のお兄ちゃんとおねぇちゃんが「いらっしゃいませ!」ってフレッシュな声で俺に社交辞令な挨拶してるから逃げれない。自動ドアの扉が閉まった瞬間から絶対に最低味噌汁だけでも飲まないと客の視線を一気に浴びそうな感じ。やるせないなぁ。しかたないから注文するよ。せっかくの早起きだし牛を食ろうてやるよ。

「並下さい」

丁寧な言葉遣いでまず店員さんに注文を言う。よく「並!」とか「並くれ!」とか亭主関白で牛丼屋のにいちゃんに注文する人もいるようだが、そんな注文の仕方はしちゃいかん。

店員さんにとってこの言葉遣い一つで満足なサービスしてやろうか適当でいいかそれくらいに関わる。下手したら地面に落ちた牛とか食らわされるかもしれない。丁寧な言葉で「並下さい」だ。よく聞いとけよ読者!牛丼屋の店員には自分はあなたの家来ですともいわんばかりの誠実さを出して接するのだ。

「ありがとう」

牛が運ばれてきたら絶対にいうべき。相手が可愛い子でもブサイクな野郎でもぜったいにありがとうだ。こっちにはちょっとの気遣いかもしれないが向こうにとっては初恋の人に告白するような胸のドキドキってのを感じる。ありがとうっていわれただけで頬赤らめて胸ドキドキ。下手したら体まで許してしまうかもしれないくらいのトキメキだ。誠実に「ありがとう」そういってやろう。

普段なら頂きますと心で唱えながら手を合わせる俺だったが、今日のこの臭いの異常さには困る。頂きますな心構えなんだがあまりの臭さにもう食欲とかそんなもの以前の問題。ゲロはきそうだゲロ。

あまりにも臭すぎて牛丼がヘドロみたいに感じてもう食えません。 多分この臭さだとたとえ旨いラーメン屋のラーメンでもまずくなるはずです。 だから食いたくありませんって言えたら俺だって苦労しない。俺は物凄く小心者だからこうやって安い値段で牛を提供してくれてるただそれだけで満足みたいな顔してしまう。

例えればなんの香りだろうか。今確実に言えることは、よく中学校の時にクラスで男どもが「おめぇ知ってたか?女のマ○コってすげー臭いらしいぞ」って定番の如く口走ってるが、その臭いとは違います。中学生の読者は安心してください。けっして牛丼屋はマ○コの香り一杯の空間にはなりません。全国何店舗あるのかわかりませんが、そんな店は絶対にありません。臭いという理由で牛丼屋にいけばマ○コの臭いが嗅げるとかそんな変態チックなこと考えて牛丼屋に走らないで下さい。

牛丼屋で「マ○コまだかな♪マ○コまだかな♪」とか嬉しそうに口走ったりしないでくださいね。警察に連れて行かれてもうちのHPで牛丼屋がマ○コの臭いがするって書いてたじゃんとか絶対言っちゃだめ。「鰹節の心」は青少年の心を育成するすばらしいHPだから犯罪の助長なんてしませんよ。

時間帯が悪かったのだろうか。回りをよく見ればアブラのよくついたおっさんたちが黙って牛にしゃぶりついている。シャブシャブとしゃぶりついている。アブラたっぷりのアブラーオヤジが真剣な目つきでシャブシャブシャブ。

普通高校生がこんな朝早い時間に牛をしゃぶったりしない。健全な高校生たるとも日曜日の朝は寝る為にあるのだ。神は高校生に寝る為の曜日を与えたんだ。だからそれにしたがって高校生らしく寝る。それを何を考えたのか不健康にも日曜早起き牛をしゃぶる高校生。俺はなんて馬鹿なんだ。ありえねぇよマジで。

アブラーオヤジの香りの中迫り来る異臭に耐えて牛をしゃぶる俺。もちろん黙ってにおいに逃れるように真剣に。俺と同じように不健康にも朝から飯食ってるカップルもいたが、勿論彼らも本日の牛丼だけは黙って急ぐように食らっている。アブラーオヤジ臭から逃れるように。

エスカレーターでも堂々と広がって急ぐ人の通路を塞ぎまくる彼らバカップルを俺は散々馬鹿にしまくったが今日ばかりは同情するよ。なんか見てられないくらい可愛そうなバカップル。

普段うまいと思って食らってた牛だったが今日は不思議にも飽きがやってきた。天下の牛丼に飽きが来るくらいの異臭だぞ。マジありえなくないか?

目の前にある七味唐辛子やら紅生姜。最終的にはサラダにかけるドレッシングなどとありえないバリエーションでなんとか飽きを防いだ。これならいつまでも食ってられるぞ。

そうこうしてるうちに2〜3人のアブラーオヤジ郡は立ち去ったアブ・ラ・オヤジの放つ異臭に開放される。そう思ったのが甘かった。

消えねぇ!アブラーオヤジの異臭が未だに消えねぇ。いや違う。これは奴らの出した臭だけではねぇ。あきらかに違う。もうだってこの香りアブラーオヤジの余韻みたいな香りでは無い。もう確実にこの店に染み付いた純粋なる牛丼屋臭だ。

まじヤバイ。時給1150円で働いてるアルバイター店員もさすがにこの香りでは割りにあわないことだろう。確実に人の脳すらも狂わす臭だ。ありえんぞ牛丼屋!

けっしてまずいものではない。しかし俺はあきらかにオヤジの失敗したたまねぎたっぷりの焼き飯を水で押し込んで食うかのように、目の前のその牛を支給されたお茶でメリメリメリっと押し込む。

牛丼フェチの意地を守り通すかのように牛を食らい切った。もちろん食ってる姿など誰にも見せられない姿、大食い選手権の優勝者みたいな絶対にお婿にいけないような食いっぷりだったがフェチを守るための信念が俺を突き動かしていた。

「ありがとう」

もちろん店を出るときはこの言葉を忘れてはいけない。誇り高き牛丼フェチたるとも、絶対にこの怒りを時給1150円のアルバイターにぶつけてはなるまい。金を10円単位でお釣りを残さないようにピッタリ払うと、勇ましく扉を出るのだ。

最後に一つ言える事は、もう誰にもあのアブラーオヤジの異臭をぬぐうことなどできない。ファブったって無理だ絶対に。


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